
― 権力を現実化し、権力を拘束する憲法 ―
◇ 基本理念
本憲法私案は、国家を否定するものではなく、また、国家に白紙委任を与えるものでもありません。
本私案の目的は、現実の危機に対応できる国家機能を明確にしつつ、そのすべてを国民主権、基本的人権、権力分立、透明性、説明責任によって厳格に拘束することにあります。
国家は、国民の生命、自由、尊厳、生活、財産及び未来世代の利益を守るために存在します。
国民は、国家権力の源であり、同時に国家権力を監視し、制御する主体です。
本私案は、次の原則に基づきます。
一 国民主権と立憲主義を、すべての統治の出発点とする。
二 象徴天皇制を維持しつつ、皇室を政治利用から守り、天皇及び皇族の個人としての尊厳と基本的人権を保障する。
三 国防組織を憲法上明記し、その任務を国防に限定するとともに、国会、司法、国民及び独立監察機関による厳格な統制を置く。
四 基本的人権を現代社会に即して再構成し、ウェルビーイング、情報自己決定権、環境権、性的多様性、信教の自由、報道被害からの保護を明確にする。
五 日本国民の要件と、合法的に在留する外国籍住民の権利及び義務を区別し、いずれについても法の下の平等と人間の尊厳を保障する。
六 国会、内閣、裁判所の権限を明確に分け、国民による監視、情報公開、記録保存、国民審査及び直接民主制的手続を整備する。
七 政党、政治団体、労働団体、宗教法人その他公共性を有する団体について、思想及び結社の自由を保障しつつ、会計、政治的支出、構成員への強制及び外国勢力との関係について透明性を義務付ける。
八 地方自治を強化し、首都及び首都機能の配置を法律で定め、一極集中を是正し、災害、安全保障及び行政継続に備えた分散型国家構造を整える。
九 緊急事態においても、国会、司法、基本的人権及び情報公開の原則を停止してはならない。
十 憲法は、国民を縛る道具ではなく、国家権力を縛る最高法規である。
改正 日本国憲法 前文

日本国民は、すべての人が個人として尊重され、自由と尊厳をもって生きることを、政治と社会の根本に置く。
私たちは、長い歴史の中で受け継がれてきた文化、豊かな自然、地域に根ざした暮らし、そして象徴天皇制のもとに培われてきた国民統合の営みを、未来へ引き継ぐべき大切な基盤として認める。
しかし、国家、伝統、共同体又は多数者の意思は、いかなる場合にも、個人の尊厳及び基本的人権を不当に侵してはならない。
国家は国民の上に立つものではなく、国民の信託により、国民の生命、自由、生活、財産及び幸福を守るために存在する。
私たちは、戦争の惨禍を深く省み、侵略戦争及び武力による威嚇を否定し、国際社会の平和と協調に誠実に努める。
同時に、国民の生命と生活を守るため、現実の危機に対応できる国家機能を備え、そのすべてを国民主権、文民統制、情報公開、司法審査及び国会による監督のもとに置く。
私たちは、AI、情報技術、環境変動、人口構造の変化、国際的な緊張、経済及び情報空間における新たな脅威に直面する時代にあっても、人間の尊厳を中心に据え、自由で公正な社会を築く責任を負う。
私たちは、現在を生きる者だけでなく、まだ生まれていない未来世代に対しても責任を負う。
自由、平和、法の支配、民主主義、自然との共生及び社会の持続可能性を次の世代へ手渡すため、ここにこの憲法を定める。
◇ 現行憲法との比較
- 普遍的原理の扱い:
- 【自民党案など】日本の歴史、文化、伝統を尊重する姿勢を明確にするため、全面的に書き換える方向性が示されている。
- 【私案】国民主権、基本的人権の尊重、平和主義といった人類普遍の原理を記した現行の格調高い文章を、国家の基礎として完全に維持する。
- 新たな国家理念の追加:
- 【現行】当時は想定されていなかったため、地球環境や世代間の衡平性への言及はない。
- 【私案】最終段落に「未来世代に対する責任」と「地球環境の保全」という、21世紀の国家が直面する最大の生存課題を追記した。
◇視点と詳細解説(改訂の意図)
本私案は、憲法の前文を「国家の文化的アイデンティティを語るポエム(詩)」ではなく、「国家権力の限界と目的を定める冷徹な社会契約」として位置づけています。
特定の歴史観や「日本の美しい伝統」を前文に書き込もうとする試みは、国民の中に「その伝統にそぐわない少数者(マイノリティ)」を生み出し、国家が特定の価値観を国民に強制する根拠になりかねないため、明確に退けました。
一方で、気候変動や環境破壊は、現在の国民だけでなく「まだ選挙権を持たない未来の世代」の生存権を直接脅かすものです。
そこで、世界的な立憲主義の潮流である「環境立憲主義」を取り入れ、国家のすべての政策決定において「未来世代への責任(持続可能性)」を憲法上の最重要基準として機能させるための土台を、前文の末尾に打ち込みました。
◇予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】保守・伝統主義の立場から 「現行憲法の前文は『翻訳調の日本語』であり、日本の独自性や悠久の歴史が全く表現されていない。
自民党案のように、日本の国家としてのアイデンティティをもっと強く打ち出すべきではないか?」
- 【回答のロジック】憲法は「権力を縛るための法」であり、「道徳の教科書」や「歴史書」ではありません。
民主主義や基本的人権の普遍的原理は、西洋の専売特許ではなく、人類全体が獲得してきた成果です。国家の伝統や文化は、国民一人ひとりが日々の生活や自由な精神活動の中で自発的に継承し、育んでいくものであり、国家権力(憲法)が上から定義して強制するものではありません。
前文に特定の歴史観を組み込むことは、多様化する現代社会において、むしろ国民統合を阻害する「分断の火種」となります。
【反論2】経済・現実主義の立場から
「前文に『地球環境の保全』という理念を崇高に掲げすぎると、国家の経済成長や産業競争力を阻害する足かせ(環境過激派による訴訟の乱発など)になるのではないか?」
- 【回答のロジック】21世紀において「持続可能性(サステナビリティ)」は、経済成長と対立するものではなく、経済を存立させるための大前提です。
この前文は、直ちにすべての経済活動を停止させるような極端な環境主義を規定したものではなく、「現在の世代の繁栄と、未来の世代の生存権のバランスをとる」という国家のコンパス(羅針盤)を示すものです。
むしろ、環境保全を憲法上の理念として掲げることは、日本が国際社会において名誉ある地位を占め、新たな環境経済分野で世界をリードするための強力な法的基盤となります。
第一章 国民主権及び象徴天皇制

第一条 国民主権
日本国の主権は、日本国民に存する。
2 すべての国家権力は、日本国民の信託に基づき、日本国民のために行使されなければならない。
3 この憲法は、国家権力を拘束し、国民の自由、尊厳及び権利を保障するための最高法規である。
第二条 天皇の地位
天皇は、日本国及び日本国民統合の象徴であり、その地位は、主権を有する日本国民の総意に基づく。
2 天皇は、国政に関する権能を有しない。
3 天皇は、この憲法及び法律の定めるところにより、国事に関する行為その他公的行為を行う。
第三条 天皇及び皇族の非政治性
天皇及び皇族は、政党、政治団体、宗教団体、企業、外国勢力その他の団体又は勢力の政治的目的のために利用されてはならない。
2 国、地方公共団体、政党、政治団体その他の者は、天皇又は皇族の地位、発言、行為、儀礼又は公的活動を、特定の政策、政党、候補者、思想、信条又は政治的主張の正当化に用いてはならない。
3 天皇及び皇族は、象徴天皇制の中立性を害する政治的活動を行わない。ただし、この規定は、天皇及び皇族の個人としての尊厳、良心、信教、学問、文化的活動及び私的生活を不当に制限するものではない。
第四条 天皇及び皇族の尊厳と基本的人権
天皇及び皇族は、個人としての尊厳及び基本的人権を有する。
2 天皇及び皇族の権利に対する制約は、象徴天皇制の維持及び公的地位に伴う責任のために必要な最小限度に限り、法律で定める。
3 国及びその機関は、天皇及び皇族の人格、生命、身体、健康、教育、婚姻、信教、財産、私的生活及び精神的自由を尊重しなければならない。
4 天皇及び皇族は、その公的地位に伴う責任を負う。ただし、その責任は、個人としての尊厳を否定し、又は人間としての通常の生活を不当に奪うものであってはならない。
第五条 皇位継承
皇位は、皇室に属する者が継承する。
2 皇位継承の制度は、国民主権、象徴天皇制の安定、皇室の継続性、個人の尊厳及び性別による不当な差別の禁止に照らして、法律で定める。
3 皇位継承に関する法律は、特定の政治的勢力、宗教的勢力、外国勢力その他外部の勢力による恣意的な干渉を受けてはならない。
4 皇位継承の安定を損なうおそれがある制度変更を行うときは、国会における十分な審議及び国民への説明を経なければならない。
第六条 皇室の生活、自主性及び保護
国は、皇室の公的役割を尊重するとともに、天皇及び皇族が人間として尊厳ある生活を営むために必要な環境を整えなければならない。
2 皇室の内部に関する事項については、象徴天皇制及び法の支配に反しない範囲で、皇室の意思及び自主性が尊重されなければならない。
3 国及びその機関は、天皇及び皇族に対し、過度な公務、過度な儀礼、政治的意図に基づく行事参加その他心身の健康又は私的生活を害する扱いをしてはならない。
4 天皇及び皇族に関する報道、取材及び情報の公開は、国民の知る権利に資する場合であっても、人格、名誉、私生活及び安全を不当に侵害してはならない。
第七条 皇室の財産及び会計
皇室の財産管理については、皇室の尊厳、自主性及び生活の安定を尊重する。
2 公的費用により支えられる皇室の活動、公的財産及び公的会計については、法律の定めるところにより、国民に対して報告されなければならない。
3 皇室の私的財産及び私的生活に関する情報は、公共性が認められる場合を除き、不当に公開されてはならない。
4 皇室の財産及び会計に関する制度は、皇室を政治的、経済的又は外国勢力による不当な影響から守るものでなければならない。
第八条 皇室事務機関
皇室に関する事務を担う機関は、天皇及び皇族の尊厳、生活及び非政治性を守るために設けられる。
2 皇室事務機関の人事、予算及び運営は、内閣からの過度な政治的影響を受けてはならない。
3 皇室事務機関の長その他重要な職にある者の任命については、法律の定めるところにより、国会の審査を経なければならない。
4 皇室事務機関は、その職務の遂行について、国会及び国民に対し、必要な説明責任を負う。ただし、その説明は、天皇及び皇族の私的生活、健康、信教、良心及び安全を不当に害するものであってはならない。
第九条 国事行為及び公的行為
天皇の国事に関する行為は、この憲法及び法律の定めるところにより、内閣の助言と承認に基づいて行われる。
2 天皇の国事に関する行為については、内閣がその責任を負う。
3 天皇及び皇族の公的行為は、象徴としての地位、国民統合の趣旨及び非政治性に反しない範囲で、法律により定める。
4 国事行為及び公的行為は、天皇又は皇族の人格、健康及び生活を不当に害するものであってはならない。
◇現行憲法との比較
- 地位の定義:
- 【現行】「象徴」とのみ規定され、元首かどうかの解釈が曖昧。
- 【私案】国際儀礼上の事実と合致させるため「元首」と明記しつつ、「象徴」としての性格を維持。
- 皇位継承のルール:
- 【現行】皇室典範(法律)により「男系男子」に限定。
- 【私案】絶対的長子相続制(性別を問わず第一子)へ移行し、法と「皇室の自主的規範」の両輪で柔軟に運用可能とする。
- 天皇・皇族の人権と私的行為:
- 【現行】国事行為のみが規定され、私的行為(祭祀や社会的活動)の自由や人権保障の範囲が不明確。
- 【私案】政治的権能を厳格に禁じる一方で、宗教的・文化的な「私的行為の自由」を憲法上保障し、国家権力の不当な干渉を排除する。
◇視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の最大の眼目は、制度の矛盾による皇室への人権侵害を解消し、象徴天皇制を未来へ接続するための「構造的改革」です。
皇位継承を「第一子が性別を問わず継承する」としたことは、特定の歴史解釈(男系男子)に固執して特定の性別に出産を強要する非人道的な重圧を取り除くものです。
また、旧宮家の男系男子を養子とする案は、憲法第14条が禁じる「門閥貴族(特権階級)」の事実上の復活であり、法の下の平等に反するため採用していません。
天皇を「元首」と明記しつつも、政治的利用から厳重に保護し、同時に一人の人間としての基本的人権(信教の自由や表現の自由)を回復させることで、自然な家族の形に基づく持続可能な皇室の姿へと原点回帰させています。
◇予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】保守・伝統主義の立場から
「男系男子による万世一系の伝統こそが天皇の正統性の根拠であり、絶対的長子相続制(女系容認)や旧宮家案の否定は、皇室の歴史的連続性を破壊するのではないか?」
- 【回答のロジック】 男系継承の歴史の大部分は「側室制度(一夫多妻的な環境)」を前提に成立していたものです。
一夫一婦制と基本的人権の尊重が定着した現代において、特定の性別に継承を限定し続けることは、制度として破綻しているだけでなく、当事者への重大な人権侵害を伴います。
また、数世代にわたり一般国民として生きてきた旧宮家の方々を皇族とすることは、憲法第14条の「法の下の平等」と矛盾します。
現代における皇室の正統性は、特定の血統主義への固執ではなく、主権者たる国民との普遍的価値(男女平等や個人の尊厳)の共有によってこそ維持されると解釈すべきです。
【反論2】リベラル・護憲派の立場から
「天皇を『元首』と明記することは、戦前の国家主義への回帰につながり、天皇の権威を利用した権力の暴走を招くのではないか?」
- 【回答のロジック】 私案では、第4条2項で「いかなる政治的な権能も有さず、また政治的な活動を行わない」と現行以上に厳格な歯止めをかけています。
元首化は、あくまで国際社会における外交プロトコル(事実上の国家元首としての扱い)と国内法の乖離を埋めるための実務的な措置です。
むしろ私案は、天皇の「私的行為の自由」を保障することで、天皇や皇族を時の政権が「国家統合の都合の良いツール」として恣意的に管理・利用することを憲法レベルで禁止しており、権力の暴走を防ぐ防波堤として機能します。
【反論3】制度設計の観点から
「皇位継承を法律だけでなく『皇室の自主的な規範』にも委ねるのは、国会の関与(民主的統制)を弱めることになるのではないか?」
- 【回答のロジック】皇室のすべての事柄を単一の法律(皇室典範)で縛ることは、皇室内部の私的な問題や家族のあり方までが、常に国会での政治的駆け引きの材料にされることを意味します。
皇位継承の根幹ルール(絶対的長子相続制など)は国会が関与する法律で明確に定めつつ、宮家の創設や日常の細かな運用は皇室の自主性に委ねるというハイブリッド構造こそが、皇室の政治的中立性を保ち、「過剰な民主的干渉(ポピュリズム)」から皇室の人権を守る最適解となります。
第二章 平和主義、国防及び安全保障

第十条 平和主義
日本国は、国際紛争を解決する手段としての侵略戦争、武力による威嚇及び武力の行使を放棄する。
2 日本国は、国際法、国際協調及び平和的手段により、国際社会の平和と安全の維持に誠実に努める。
3 この条の規定は、日本国が、自国の独立、国民の生命、自由、財産及び生活を守るために必要な自衛の措置をとることを妨げない。
第十一条 国防軍
日本国は、自国の独立、国民の生命、自由、財産、生活、領土、領海、領空及び主権を守るため、国防軍を保持する。
2 国防軍の任務は、日本国の防衛、国民の保護、国際法に基づく平和協力及び大規模災害その他国民生活に重大な危険がある場合の支援に限られる。
3 国防軍は、いかなる場合にも、侵略戦争、対外的威圧、政権維持、政党活動、思想統制又は国民の正当な権利行使の抑圧のために用いられてはならない。
4 国防軍の組織、権限、行動、隊員の身分及び統制については、この憲法の原則に従い、法律で定める。
第十二条 専守防衛
国防軍は、専守防衛を基本とする。
2 専守防衛とは、日本国に対する武力攻撃、又は日本国の存立及び国民生活の根幹を揺るがす明白かつ切迫した危険に対し、必要最小限度の範囲で防衛措置をとることをいう。
3 国防軍の行動は、必要性、均衡性、限定性及び文民統制の原則に従わなければならない。
第十三条 能動的防衛
日本国は、国家の存立、国民生活の根幹又は重要インフラに対する重大な攻撃の明白かつ切迫した危険がある場合、法律の定めるところにより、その危険を未然に排除し、又は被害を最小限にするための能動的防衛措置をとることができる。
2 能動的防衛措置は、防衛目的に限られ、必要最小限度を超えてはならない。
3 能動的防衛措置を行う場合、内閣は、事前に国会の承認を得なければならない。ただし、緊急でやむを得ない場合は、措置後ただちに国会に報告し、承認を求めなければならない。
4 国会の承認を得られない能動的防衛措置は、すみやかに終了されなければならない。
5 能動的防衛措置に関する記録は、法律の定めるところにより保存され、事後に国会及び独立監察機関の検証を受けなければならない。
第十四条 文民統制
国防軍は、国民により選ばれた文民機関の統制に服する。
2 内閣総理大臣は、国防軍の最高の指揮監督権を有する。
3 内閣総理大臣及び国防に関する所管大臣は、国防軍の行動について、国会に対し説明責任を負う。
4 国防軍の隊員は、文民統制、憲法、法律及び国際法に従わなければならない。
5 国防軍は、政治的中立を守り、政党、政治団体、企業、宗教団体、外国勢力その他特定の勢力の利益のために行動してはならない。
第十五条 国会による国防監督
国会は、国防軍の組織、予算、装備、人事、作戦、海外派遣、能動的防衛措置及び秘密指定について監督する。
2 衆議院及び参議院には、国防に関する常設委員会を置く。
3 国防に関する常設委員会は、法律の定めるところにより、国防軍及び関係行政機関に対し、資料の提出、証言及び説明を求めることができる。
4 国防に関する情報のうち、公開により国の安全が具体的に害されるものは、法律に基づき秘密とすることができる。ただし、秘密指定は必要最小限でなければならず、国会及び独立監察機関による監督を免れない。
第十六条 国防監察機関
国防軍の活動、隊員の権利保障、秘密指定、能動的防衛措置、装備調達、会計及び法令遵守を監察するため、国会に対して責任を負う独立した国防監察機関を置く。
2 国防監察機関は、国防軍の隊員、職員その他関係者からの申告、苦情及び公益通報を受け、調査する権限を有する。
3 国防監察機関は、必要な範囲で資料の提出、関係者の説明及び施設への立入りを求めることができる。
4 国防監察機関の職務、権限、独立性及び構成については、法律で定める。
第十七条 国防軍隊員の権利及び義務
国防軍の隊員は、憲法、法律及び国際法を尊重し、日本国及び国民を守る義務を負う。
2 国防軍の隊員は、その職務の特殊性に応じた制約を受ける。ただし、個人としての尊厳、生命、身体、健康、適正な処遇、信教、良心及び救済を求める権利は尊重されなければならない。
3 国防軍の隊員は、違法な命令に従う義務を負わない。
4 国は、国防軍の隊員及びその家族に対し、職務上の危険、負傷、疾病、死亡、心理的負担その他の事情に応じた十分な保護及び支援を行わなければならない。
第十八条 経済安全保障及び重要インフラ防衛
国は、国民生活及び国家の存立に不可欠な食料、エネルギー、通信、金融、医療、交通、水道、物流、宇宙基盤、海洋基盤、クラウド基盤、半導体その他重要な物資及び基盤を守る責務を負う。
2 国は、外国勢力、企業、団体その他の者による経済的威圧、供給遮断、技術流出、重要インフラへの不当な支配又は破壊から、国民生活及び国家の自立を守るために必要な措置をとることができる。
3 前項の措置は、法律に基づき、必要最小限度で行われなければならず、国民の自由、財産権、営業の自由及び国際的な信頼を不当に害してはならない。
第十九条 認知領域及び情報空間の安全
国は、外国勢力その他による偽情報、世論操作、選挙干渉、社会的分断の扇動、サイバー攻撃その他情報空間における重大な脅威から、国民の自由な意思形成及び民主的手続を守る責務を負う。
2 国は、前項の脅威に対応する場合であっても、検閲、思想統制、報道統制又は政府に対する正当な批判の抑圧をしてはならない。
3 国は、国民に対し、情報の真偽を判断するために必要な教育、情報公開及び透明な説明を行うよう努めなければならない。
第二十条 秘密保全、記録保存及び事後検証
国防及び安全保障に関する秘密は、国民の安全を守るために必要な範囲で、法律に基づき指定することができる。
2 秘密指定は、その理由、範囲及び期間を明確にしなければならない。
3 秘密指定された事項であっても、国会、裁判所及び独立監察機関による必要な監督又は審査を妨げてはならない。
4 国防、安全保障、外交、能動的防衛及び重要インフラ防衛に関する意思決定及び行動の記録は、作成し、保存しなければならない。
5 国は、国の安全を害しない範囲で、国防及び安全保障に関する政策、行動及び結果について、国民に説明しなければならない。
第三章 国民、在留者及び基本的人権

第二十一条 人間の尊厳
すべての人は、個人として尊重される。
2 人間の尊厳は、国政、法律、行政、司法、教育、労働、家族、地域社会及びあらゆる公的制度の基本でなければならない。
3 国及び地方公共団体は、人を国家、社会、家族、団体、経済又は技術の手段としてのみ扱ってはならない。
第二十二条 基本的人権の保障
基本的人権は、侵すことのできない永久の権利として、現在及び将来の国民に与えられる。
2 日本国に在留するすべての者は、人間としての尊厳に由来する基本的人権を保障される。
3 基本的人権に対する制約は、他者の権利との調整、公共の安全又は民主的社会の維持のために必要な場合に限り、法律に基づき、必要最小限度でなければならない。
4 国は、「公益」「秩序」「伝統」「多数者の意思」その他抽象的な理由のみによって、基本的人権を制限してはならない。
第二十三条 日本国民の要件
日本国民たる要件は、法律で定める。
2 国籍に関する法律は、出生、血統、帰化、家族関係、長期在留その他の事情を考慮し、公正で明確な基準を置かなければならない。
3 国は、日本社会の一員となる意思を有する者に対し、差別なく、明確で公正な帰化の手続を保障しなければならない。
第二十四条 在留外国人の地位
合法的に日本国に在留する外国人は、その在留資格に応じ、法律の定めるところにより、生活、労働、教育、医療、司法上の救済及び社会参加に関する権利を保障される。
2 国政選挙における選挙権、被選挙権、公務に就く権利その他国家の統治に直接関わる権利は、法律により、日本国民に限ることができる。
3 国及び地方公共団体は、在留外国人を不当に差別し、又はその尊厳を害する扱いをしてはならない。
4 在留外国人は、日本国の憲法、法律及び地域社会の平穏を尊重しなければならない。
第二十五条 法の下の平等
すべての人は、法の下に平等である。
2 人種、民族、国籍、信条、性別、性的指向、性自認、障害、疾病、年齢、社会的身分、門地、出生、家族関係、経済的状況その他の属性により、不当に差別されない。
3 国は、現実に存在する不利益又は格差を是正するため、必要で合理的な措置をとることができる。
第二十六条 生命、自由及びウェルビーイング
すべての人は、生命、自由及び幸福追求に対する権利を有する。
2 すべての人は、身体的、精神的及び社会的に良好な状態を追求する権利を有する。
3 国及び地方公共団体は、健康、福祉、住居、教育、労働、文化、地域社会とのつながりその他人間らしい生活に必要な条件の整備に努めなければならない。
4 この条の権利は、国民に特定の生き方、幸福観又は価値観を強制する根拠として用いてはならない。
第二十七条 思想、良心及び内心の自由
思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。
2 何人も、自己の思想、信条、価値観、政治的意見又は内心を表明すること、又は表明しないことを強制されない。
3 国、地方公共団体、学校、職場、家族、団体その他の者は、思想又は良心を理由として、人を不利益に扱ってはならない。
第二十八条 信教の自由
信教の自由は、何人にも保障される。
2 何人も、信仰を持つこと、信仰を持たないこと、信仰を変えること、宗教的行為に参加すること、又は参加しないことについて、強制されない。
3 未成年者の信教の自由は、その年齢及び成長に応じて尊重されなければならない。親権者、保護者、親族、学校、宗教団体その他の者は、未成年者の生命、身体、教育、人格形成又は将来の自由を害する形で信仰を強制してはならない。
4 国及び地方公共団体は、特定の宗教を援助し、助長し、圧迫し、又は干渉してはならない。
5 宗教法人その他宗教に関わる団体は、信教の自由を保障される。ただし、その財産、収益、寄附、支出及び会計については、法の下の平等及び租税公平の原則に従い、法律で定める義務を負う。
第二十九条 表現、報道及び取材の自由
表現の自由は、これを保障する。
2 報道及び取材の自由は、民主的社会に必要なものとして保障される。
3 報道及び取材の自由は、個人の名誉、私生活、人格、平穏、安全及び基本的人権を不当に侵害してはならない。
4 国は、検閲をしてはならない。
5 国は、表現、報道又は取材に対し、政治的立場、政府批判、思想又は信条を理由として不利益を与えてはならない。
第三十条 知る権利及び情報公開
国民は、国及び地方公共団体の活動について知る権利を有する。
2 国及び地方公共団体は、政策決定、予算、契約、会議、交渉、統計、公文書その他公的情報について、法律の定めるところにより公開しなければならない。
3 国は、国民が正確な情報に基づき自由に判断できるよう、公的情報を分かりやすく提供するよう努めなければならない。
第三十一条 私生活及び人格の保護
すべての人は、私生活、住居、通信、名誉、肖像、氏名、人格及び平穏な生活を不当に侵害されない権利を有する。
2 国、地方公共団体、企業、報道機関、団体その他の者は、法律の根拠なく、又は正当な理由なく、個人の私生活又は人格に関する情報を収集し、利用し、公開してはならない。
第三十二条 情報自己決定権
すべての人は、自己に関する情報について、その取得、利用、保存、提供、訂正、削除、利用停止及び説明を求める権利を有する。
2 国、地方公共団体及び公共性を有する事業者は、個人情報を取り扱う場合、その目的、範囲、保存期間、提供先及び本人の権利を明らかにしなければならない。
3 個人の行動、思想、健康、財産、信用、交友、政治的傾向その他人格に深く関わる情報を用いた監視、評価又は分類は、法律に基づき、必要最小限度で行われなければならない。
第三十三条 AI及び自動判断に関する権利
国、地方公共団体及び公共性を有する機関が、AIその他の自動判断システムを用いて人の権利、義務、資格、給付、処分、採用、評価その他重要な事項に影響を与える場合、その使用目的、判断の概要、影響及び異議申立ての手続を明らかにしなければならない。
2 何人も、自己に重大な影響を及ぼす自動判断について、人による説明、審査及び救済を求める権利を有する。
3 AIその他の技術は、人間の尊厳、自由、平等及び民主的手続を害するために用いられてはならない。
第三十四条 学問、教育及び文化の自由
学問の自由は、これを保障する。
2 教育を受ける権利は、すべての人に保障される。
3 教育は、個人の尊厳、自由な人格形成、社会に参加する力及び他者と共に生きる力を育てることを目的とする。
4 教育機関の自治は、教育を受ける者の権利、安全、透明性、説明責任及び社会的責任に反しない範囲で保障される。
5 国及び地方公共団体は、教育又は学問に対し、特定の政治思想、宗教、歴史観又は価値観を強制してはならない。
第三十五条 婚姻、家族及び共同生活
婚姻、家族及び共同生活に関する事項は、個人の尊厳と平等に基づく。
2 婚姻は、当事者の自由で明確な意思に基づかなければならない。
3 国は、性別、性的指向、性自認、家族形態、出生、婚姻の有無その他の事情により、個人又は家族を不当に差別してはならない。
4 国は、同性間の共同生活関係その他多様な家族形態について、個人の尊厳、生活の安定、相続、医療、扶養、子の福祉その他の事情を考慮し、法律で保護のあり方を定めなければならない。
5 家族は、個人の尊厳を支える場として尊重される。ただし、家族であることは、個人に対する支配、暴力、信仰の強制、労働の強制、介護の押し付け又は自由の侵害を正当化するものではない。
第三十六条 性のあり方に関する尊厳
すべての人は、性別、性的指向、性自認及び性のあり方に関し、人格と尊厳を尊重される。
2 何人も、性のあり方について、本人の意思に反して表明、証明、変更、否定又は受容を強制されない。
3 国及び地方公共団体は、医療、教育、労働、行政手続、施設利用その他社会生活において、性の不一致その他性のあり方に関する困難を有する者に対し、合理的な配慮を行うよう努めなければならない。
4 前項の配慮は、他者の尊厳、安全、私生活及び自由を不当に害するものであってはならない。
第三十七条 身分登録制度
国は、戸籍制度の歴史的役割を尊重しつつ、個人の尊厳、家族関係の多様化、国際的な移動、災害時の本人確認及びデジタル社会に対応するため、公正で安全な身分登録制度を法律で整備する。
2 身分登録制度は、出生、親子関係、婚姻、離婚、死亡、国籍、在留資格その他人の身分に関する事項を、正確かつ安全に記録するものでなければならない。
3 身分登録制度は、個人を監視し、差別し、又は不当に分類するために用いられてはならない。
4 国は、身分登録制度及び個人番号制度を運用するに当たり、情報自己決定権、プライバシー及び安全管理を保障しなければならない。
第三十八条 労働の権利
すべての人は、安全で公正な条件の下で働く権利を有する。
2 国は、賃金、労働時間、休息、安全衛生、職業訓練、失業時の支援、育児、介護、障害、疾病その他の事情に応じ、働く者の生活と尊厳を守る制度を整備しなければならない。
3 外国人就労者を含むすべての働く者は、不当な搾取、差別、暴力、強制、賃金不払い、旅券又は身分証の取り上げ、在留資格を利用した支配その他不公正な扱いから保護される。
4 国は、多様な勤務態様、短時間労働、在宅勤務、請負、業務委託、個人事業その他実態として働く者について、その実情に応じた保護を法律で定めなければならない。
第三十九条 労働三権
働く者は、雇用形態、契約形態、就労場所、国籍その他の違いにかかわらず、団結権、団体交渉権及び団体行動権を有する。
2 労働団体は、構成員の労働条件、職業上の利益及び尊厳を守ることを本来の目的とする。
3 労働団体は、構成員に対し、特定の政党、候補者又は政治団体への支持、献金、選挙運動その他の政治的行動を強制してはならない。
4 労働団体の会計、政治的支出及び団体運営は、構成員に対して透明でなければならない。
5 この条は、働く者又は労働団体が、労働条件、社会保障、経済政策その他労働に関わる事項について政治的意見を表明する自由を妨げるものではない。
第四十条 生存、福祉及び社会保障
すべての人は、健康で文化的な最低限度の生活を営む権利を有する。
2 国は、貧困、疾病、障害、高齢、失業、孤立、虐待、災害その他生活上の困難に対し、必要な社会保障及び支援を整備しなければならない。
3 社会保障は、人の尊厳、自立、参加及び安心を支えるために行われなければならず、人を恥じさせ、排除し、又は従属させるために用いられてはならない。
第四十一条 環境権及び未来世代への責任
すべての人は、健康で文化的な生活に適した環境を享受する権利を有する。
2 国及び地方公共団体は、自然環境、生物多様性、気候、景観、水、大気、土壌、海洋その他の環境を保全し、回復する責務を負う。
3 国は、将来の世代に対し、過度な環境的、財政的又は社会的負担を残さないよう努めなければならない。
4 国及び地方公共団体は、環境、財政、社会保障、教育、インフラその他将来世代に重大な影響を及ぼす政策について、その影響を説明するよう努めなければならない。
第四十二条 国民の責務
国民は、この憲法により保障される自由及び権利を、相互の尊重と責任に基づいて行使する。
2 国民は、法律の定めるところにより、納税、教育を受けさせる責務その他民主的社会を維持するために必要な責務を負う。
3 国民の責務は、国家が国民に特定の思想、信条、生活様式又は犠牲を強制する根拠として用いられてはならない。
第四十三条 権利救済
何人も、国、地方公共団体又は公的権限を行使する者によって権利を侵害されたときは、公正で迅速な救済を求める権利を有する。
2 国は、裁判、行政不服申立て、独立監察機関、情報公開、個人情報保護その他実効的な救済制度を整備しなければならない。
◇ 現行憲法との比較
- 幸福追求からウェルビーイングへ:
- 【現行】「幸福追求権」という主観的・抽象的な表現。
- 【私案】身体的、精神的、社会的に良好な状態を指す「ウェルビーイング」に拡張し、国家にその条件を整備する責務を負わせる。
- デジタル時代の権利(AIとプライバシー):
- 【現行】情報化社会に関する規定は存在しない。
- 【私案】自己のデータに対する「情報自己決定権」を新設し、AIのアルゴリズムによる監視やプロファイリングから国民を防御する。
- 家族の多様性と個人の尊厳:
- 【現行】「両性の合意」という文言から、同性婚や夫婦別姓について解釈の争いがある。
- 【私案】選択的夫婦別姓、同性婚、そして「親の所有物ではない子どもの人権」を憲法レベルで明記し、法の下の平等を徹底する。
- 死刑制度と究極の人権:
- 【現行】最高裁の判例上、死刑は「残虐な刑罰」には当たらず合憲とされる。
- 【私案】国家による生命の剥奪(死刑)を明確に禁止。代替として恩赦のない「絶対的終身刑」を設け、社会防衛と命の尊厳を両立させる。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の目的は、21世紀の社会課題に合わせて基本的人権の概念をアップデートすることです。
アリストテレスが説いた「最高善(エウダイモニア)」の現代的表現とも言える「ウェルビーイング」を軸に据えました。
また、現代において国民の自由を脅かすのは国家権力だけでなく、「巨大IT企業のアルゴリズム」や「同調圧力」でもあります。これらから「個人の尊厳」を守り抜くため、情報自己決定権や多様な家族の保護を明記しました。
さらに、人権保障の究極の試金石として「死刑の廃止」に踏み込みました。
いかなる理由があろうと「国家が合法的に人の命を奪う権限」を剥奪し、代わりに「仮釈放のない終身刑」を規定することで、被害者感情や社会の安全(防衛)にも最大限の配慮を行っています。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】保守・伝統主義の立場から(第24条関連)
「選択的夫婦別姓や同性婚を憲法で認めれば、日本の伝統的な家族の絆が崩壊し、社会の基盤が揺らぐのではないか?」
- 【回答のロジック】憲法は「すべての国民の生き方を統一するルール」ではなく、「多様な生き方を許容し、法的に保護する枠組み」です。
夫婦同姓を望む人々の権利はそのまま守られます。
国家が法律によって特定の家族形態(家父長制的な同姓の強制など)を押し付けることは、個人の尊厳を深く傷つけます。
真の「家族の絆」とは、法律による強制ではなく、互いのアイデンティティ(氏名や性的指向など)を尊重し合う個人の自由な意思の上にのみ築かれるものです。
【反論2】治安・被害者感情の立場から(第36条関連)
「凶悪犯罪に対する死刑を廃止することは、被害者や遺族の感情を無視するものであり、犯罪の抑止力を失わせるのではないか?」
- 【回答のロジック】死刑の廃止は、犯罪者を許すことではありません。
「国家というシステムに、人間の命を奪うという取り返しのつかない絶対的権力を与えたままにしておくべきか」という立憲主義の根源的な問いです(えん罪のリスクも含みます)。
本私案では、ただ廃止するのではなく、最高刑として政治的な恩赦や仮釈放が一切認められない「絶対的終身刑」を設ける根拠を付与しています。
国家による殺人を禁じつつも、社会からの永久隔離という最も重い罰によって、社会防衛と贖罪の機会を担保する現実的なアプローチです。
【反論3】国家主権・治安の観点から(第10条の2関連) 「在留外国人の人権を憲法で明確に保障すれば、不法滞在者の権利まで過剰に守られ、国家の安全が脅かされるのではないか?」
- 【回答のロジック】 私案は「合法的に在留するすべての者」の人権を保障しつつ、選挙権や公務就任権など「国家の統治に関わる権利」は日本国民に限定できると明確に線を引いています。
人口減少が深刻化する日本において、外国籍の人材は不可欠です。
彼らを法的に不安定な「単なる労働力」として扱うのではなく、憲法レベルで基本的人権を保障することは、むしろ国際社会における日本の信用を高め、共に社会を支える「良き隣人」として統合していくための安全保障上の重要なプロセスです。
第四章 国会

第四十四条 国会の地位
国会は、国権の最高機関であり、国の唯一の立法機関である。
2 国会は、日本国民の代表機関として、内閣、行政機関、国防軍その他国家権力の行使を監督する。
3 国会は、国民の自由、権利、生活及び財産を守るため、法律を定め、予算を議決し、国政を調査し、政府の責任を明らかにする。
第四十五条 二院制
国会は、衆議院及び参議院の両議院で構成する。
2 衆議院は、国民の意思を速やかに反映する機関とする。
3 参議院は、長期的視点、地方の意思、少数意見及び権力の抑制を重視する機関とする。
4 両議院の選挙制度は、国民の意思が公正に反映され、特定の地域、団体、政党又は勢力に著しく偏らないよう、法律で定める。
第四十六条 国会議員の地位
国会議員は、全国民の代表であり、特定の政党、団体、企業、宗教団体、労働団体、外国勢力、地域又は支援者のみの代表ではない。
2 国会議員は、国民全体の利益、個人の尊厳、法の支配及びこの憲法に従い、良心に基づいて職務を行う。
3 国会議員は、その職務に関し、不当な圧力、買収、強制、利益供与又は外国勢力の影響を受けてはならない。
第四十七条 議員の独立と説明責任
国会議員は、議会における発言、表決その他の職務について、法律の定めるところにより保障される。
2 前項の保障は、国会議員が虚偽の説明、隠蔽、利益相反、不当な資金授受又は職務権限の濫用を行うことを許すものではない。
3 国会議員は、自己の政治活動、資金、関係団体、利益相反及び外国勢力との関係について、国民に分かる形で説明しなければならない。
第四十八条 政党及び政治団体
政党及び政治団体の結成、活動及び政治的意見の表明は、自由である。
2 政党及び政治団体は、民主的な政治過程を担う公共性ある団体として、その組織、意思決定、会計、寄附、支出、政策形成及び候補者選定について、透明性を確保しなければならない。
3 政党及び政治団体は、外国勢力、企業、宗教団体、労働団体その他特定の団体から不当な支配又は影響を受けてはならない。
4 政党及び政治団体の財産、経理、寄附、支出、広告、政治的活動及び関係団体については、法律の定めるところにより、国民に公開されなければならない。
第四十九条 政治資金及び利益相反
国会議員、政党、政治団体及びこれらに準ずる団体は、政治資金の収入、支出、保有財産、借入れ、寄附者、支出先及び関係団体を、国民に分かる形で公開しなければならない。
2 政治資金に関する記録は、作成し、保存し、改ざん、隠蔽又は不当な廃棄をしてはならない。
3 国会議員は、自己、配偶者、親族、秘書、関係団体又は実質的に支配する法人その他の利益が、職務に影響を及ぼすおそれがある場合、その利益相反を明らかにしなければならない。
4 政治資金及び利益相反に関する監査、調査及び公開の制度は、法律で定める。
第五十条 国会の召集
国会は、毎年少なくとも一回召集される。
2 内閣は、憲法又は法律に基づき国会の召集を求められたときは、その要求の日から十日以内に国会を召集しなければならない。
3 いずれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があったときは、内閣は、前項の期間内に臨時国会を召集しなければならない。
4 内閣が前二項の義務を怠った場合、各議院の議長は、法律の定めるところにより、国会を召集することができる。
第五十一条 会期及び審議の保障
国会の会期、延長、閉会及び休会については、国会の審議権及び国民の知る権利を不当に害しないよう、法律で定める。
2 内閣又は多数派は、国会の閉会、会期の短縮、審議拒否その他の手段により、国政調査、予算審議、外交報告、国防監督又は不祥事の検証を不当に妨げてはならない。
3 少数派の質問権、資料要求権及び審議参加権は、民主的な国会運営に必要な範囲で保障される。
第五十二条 国政調査権
各議院は、国政に関する調査を行い、証人の出頭、証言、記録の提出、資料の開示及び説明を求めることができる。
2 国政調査に対し、正当な理由なく虚偽の説明、記録の隠蔽、資料の不提出又は証言の拒否をしてはならない。
3 国の安全、外交上の秘密、個人情報その他保護すべき情報がある場合であっても、国会及び独立監察機関による必要な審査を妨げてはならない。
第五十三条 立法過程の透明性
法律案の提出、審議、修正及び採決の過程は、国民に分かる形で公開されなければならない。
2 法律案については、その目的、必要性、影響、財源、人権への影響、地方公共団体への影響及び将来世代への影響を、可能な限り明らかにしなければならない。
3 重要な法律案については、十分な審議期間、専門的意見の聴取及び国民への説明の機会を確保しなければならない。
4 緊急を要する場合であっても、国会は、事後にその必要性及び影響を検証しなければならない。
第五十四条 予算及び決算の審議
国の予算は、国会の議決に基づいて定められなければならない。
2 内閣は、予算案について、その目的、財源、支出先、将来負担、地方への影響及び国民生活への影響を明らかにしなければならない。
3 国会は、決算を審査し、支出の適正、効果、不正、無駄及び将来への負担を検証しなければならない。
4 予算及び決算に関する記録は、国民に分かる形で公開されなければならない。
第五十五条 外交、通商及び安全保障に関する報告
内閣は、外交、条約、関税、通商、安全保障、国防、重要資源、経済安全保障その他国益に重大な影響を及ぼす交渉又は合意について、速やかに国会に報告しなければならない。
2 前項の事項について、所管大臣は、国会において説明し、質疑に応じなければならない。
3 国会は、必要があると認めるときは、交渉記録、合意文書、影響評価その他関係資料の提出を求めることができる。
4 外交又は安全保障上の秘密を要する場合であっても、内閣は、法律の定めるところにより、国会の秘密会又は特別の監督手続において説明しなければならない。
第五十六条 条約の承認
条約の締結には、事前又は事後に、国会の承認を必要とする。
2 国民の権利、義務、財産、労働、税、社会保障、地方自治、安全保障又は重要インフラに重大な影響を及ぼす条約又は国際約束については、国会における十分な審議及び国民への説明を経なければならない。
3 内閣は、条約又は国際約束の解釈、運用及び相手国との合意内容について、国会に対して説明責任を負う。
第五十七条 国防及び緊急事態に関する国会承認
国防軍の重要な行動、海外派遣、能動的防衛措置、緊急事態における特別措置その他国民の権利又は国家の存立に重大な影響を及ぼす措置については、国会の承認を必要とする。
2 緊急でやむを得ない場合に内閣が前項の措置を先に行ったときは、内閣は、ただちに国会に報告し、承認を求めなければならない。
3 国会の承認を得られない措置は、速やかに終了されなければならない。
4 国会は、前項の措置について、事後に検証し、必要な責任を明らかにしなければならない。
第五十八条 国民発案
国民は、法律の定めるところにより、一定数以上の有権者の署名をもって、憲法改正、法律の制定又は改廃、国政上の重要事項について、国会に審議を求めることができる。
2 国会は、前項の求めがあったときは、相当な期間内に審議し、その結果及び理由を国民に説明しなければならない。
第五十九条 国民投票
国民は、法律の定めるところにより、憲法改正、重要法律又は国政上の重要事項について、国民投票を求めることができる。
2 国民投票においては、国民が自由で公正な判断を行えるよう、賛否双方の情報、財源、影響及び争点が分かりやすく提供されなければならない。
3 国、政党、政治団体、企業、宗教団体、労働団体、外国勢力その他の者は、虚偽情報、強制、買収、脅迫又は不透明な資金により、国民投票の公正を害してはならない。
4 国民投票の対象、効力、手続及び濫用防止については、法律で定める。
第六十条 国会と国民への説明
国会は、その審議、採決、調査、予算、決算、議員活動及び議会運営について、国民に対して説明責任を負う。
2 国会は、国民が政治を監視し、参加し、判断するために必要な情報を、分かりやすく公開しなければならない。
3 国会は、国民の代表機関であると同時に、国家権力が国民の敵とならないよう、権力、資金、記録及び政策決定を明るい場所に置く責務を負う。
◇ 現行憲法との比較
- 臨時国会の召集義務(第53条):
- 【現行】「いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない」とあるが、期限の規定がないため、内閣が数ヶ月にわたって召集を放置・先延ばしにすることが事実上可能になっている。
- 【私案】内閣及び与党の思惑によって国会の召集を意図的に遅延させることがないよう、「要求があった日から十日以内」という厳格な召集期限を憲法に明記した。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の最大の改訂ポイントは、第53条における「臨時国会召集の10日ルール」の導入です。
三権分立の原則において、国会は内閣(行政)を監視する役割を担っています。
しかし現状では、内閣に不祥事が起きた際や、野党(少数派)が緊急の国政課題を議論しようと召集を要求しても、内閣が都合の悪い議論を避けるために召集を不当に引き延ばす「召集権の濫用」が問題視されてきました。
これは少数派の権利を奪うだけでなく、国会という「言論の府」の存在意義を根底から破壊する行為です。
本私案では、あえて「20日」でもなく「10日」という極めて短い期間を設定しました。
これにより、時の政権に「国会での説明と議論から逃げる余地」を一切与えず、立法府が常に行政権を牽制できる緊張状態(本来の三権分立)を憲法レベルで復元しています。
4. 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】政府・与党(行政の効率性)の立場から
「召集要求からわずか『10日以内』というのは、法案の準備や各省庁の調整、外交日程などを考慮すると物理的に厳しすぎる。
野党が政権の足を引っ張るための『審議拒否』や『嫌がらせ』に悪用されるのではないか?」
- 【回答のロジック】国会の最大の目的は「政府が用意した法案を効率的に可決すること」だけではなく、「国政の透明性を保ち、危機において国民の多様な声を国政に反映させること」にあります。
内閣は、常に主権者の代表(国会)に対して説明責任を果たす準備をしておくのが本来の姿です。
「行政の都合」や「スケジュールの調整」を理由に、少数派の憲法上の権利(国会を開く権利)を制限することは本末転倒です。
この厳格な期限は、政府に平時から高い緊張感と透明性を強いるための不可欠な「楔(くさび)」なのです。
【反論2】議会改革・効率化の立場から(第四十二条関連)
「日本の国会は衆参の『ねじれ』が起きやすく、意思決定が遅い。この際、参議院を廃止して『一院制(単院制)』にし、もっとスピード感のある国会にすべきではないか?」
- 【回答のロジック】 たしかに一院制は意思決定が迅速ですが、それは「時の多数派が暴走しやすくなる」という危険と表裏一体です。
本私案では、第五章(第69条)で内閣の「衆議院の解散権」を厳しく制限し、さらに第十一章で「直接民主制(国民投票)」を導入しています。
強力な権限を持つ衆議院が暴走した際の「冷却期間」や「多様な民意の吸収装置」として、解散のない参議院の存在意義はむしろ高まります。
スピード(効率)よりも「熟議」と「権力の抑制」を重んじるのが、本私案の立憲主義的アプローチです。
第五章 内閣

第六十一条 内閣の地位
内閣は、行政権を行使する機関であり、国会に対して連帯して責任を負う。
2 内閣は、内閣総理大臣及び国務大臣で構成する合議機関である。
3 内閣は、国民の生命、自由、生活、財産及び権利を守るため、この憲法及び法律に従い、誠実に行政を行わなければならない。
第六十二条 内閣総理大臣
内閣総理大臣は、内閣を代表し、行政各部を指揮監督する。
2 内閣総理大臣は、内閣の統一性を保ち、国政全体の調整を行う責任を負う。
3 内閣総理大臣は、その権限を、政党、派閥、官邸補佐機関、企業、団体、外国勢力その他特定の勢力の利益のために用いてはならない。
4 内閣総理大臣は、国会に対し、内閣の基本方針、重要政策、国防、外交、財政、緊急事態及び行政運営について説明責任を負う。
第六十三条 国務大臣の責任
国務大臣は、その所管する行政について、個別に責任を負う。
2 国務大臣は、所管行政に関する政策、予算、人事、契約、記録、統計、リスク情報及び執行状況を把握し、国会に対して説明しなければならない。
3 国務大臣は、内閣総理大臣、政党、内閣官房、補佐機関又は行政機関の判断に従ったことのみを理由として、自己の責任を免れない。
4 国務大臣は、その職務を行うにあたり、所管行政機関に対して必要な情報の提出及び説明を求める権限を有する。
第六十四条 内閣の合議性
内閣は、重要な政策決定について、正式な閣議又は法律で定める手続により審議しなければならない。
2 国防、外交、通商、財政、緊急事態、国民の権利制限、重要インフラ、AI行政利用その他国民生活に重大な影響を及ぼす事項については、内閣の合議及び記録を必要とする。
3 重要な政策決定について、非公式の協議、官邸内の調整、政党内の決定又は有識者会議の提言のみをもって、内閣の責任ある決定に代えることはできない。
4 閣議その他重要な会議の記録は、作成し、保存し、法律の定めるところにより国会及び国民に公開されなければならない。
第六十五条 内閣官房及び官邸補佐機関
内閣官房は、内閣及び内閣総理大臣を補佐し、行政各部の総合調整を行う機関である。
2 内閣官房は、各国務大臣の所管責任を代替し、又は各行政機関を実質的に支配する機関となってはならない。
3 内閣官房が行う政策調整、危機管理、人事調整、情報集約及び重要政策の企画立案については、法律に基づき、その権限、手続、記録及び責任の所在を明らかにしなければならない。
4 内閣官房、内閣府、内閣補佐官、内閣参与、特命担当職、有識者会議その他官邸周辺の補佐機関は、その構成、役割、会議記録、助言内容、利益相反及び外部団体との関係について、法律の定めるところにより透明性を確保しなければならない。
第六十六条 行政各部の独立した職責
行政各部は、法律に基づき、その所管事務を誠実かつ公正に行う。
2 行政各部は、内閣の統一方針に従う。ただし、法律、専門的知見、統計、記録又は国民の権利に関わる重要な事実を、政治的都合により隠し、改ざんし、又は軽視してはならない。
3 行政各部の長及び職員は、違法な命令又は公文書の改ざん、隠蔽、不当な廃棄を命じる指示に従う義務を負わない。
4 公益通報を行った行政職員は、法律の定めるところにより保護されなければならない。
第六十七条 党と内閣の分離
内閣は、政党政治の下に成立するものであっても、憲法上の行政機関であり、政党又は与党機関の下部機関ではない。
2 内閣は、政党内の合意又は与党の方針を理由として、国会に対する説明、記録の提出、審議への出席又は国民への情報公開を拒むことはできない。
3 国務大臣は、政党上の地位又は党内事情により、行政上の責任を免れない。
第六十八条 衆議院の解散
衆議院の解散は、内閣不信任決議の可決、内閣信任決議の否決、予算案その他国政の基本に関わる重要案件の否決、又は国民の意思を問うことに合理的な必要がある場合に限り行うことができる。
2 内閣は、衆議院を解散するときは、その理由を国民に明らかにしなければならない。
3 衆議院の解散は、国会による調査、違法行為の追及、不祥事の検証又は内閣の責任追及を不当に回避するために用いてはならない。
第六十九条 行政の記録保存及び公文書管理
内閣及び行政機関は、意思決定、会議、交渉、政策形成、予算執行、契約、統計、危機管理、外交及び国防に関する記録を作成し、保存しなければならない。
2 公文書は、国民共有の知的資源であり、民主的統制の基礎である。
3 公文書の改ざん、隠蔽、不当な廃棄、虚偽作成又は不存在を装う行為は、してはならない。
4 公文書の保存期間、公開、非公開、移管及び廃棄については、法律で定める。ただし、行政機関の都合により、国民の知る権利及び国会の監督を不当に妨げてはならない。
第七十条 行政におけるAI及び情報技術の利用
内閣及び行政機関は、行政の効率化、公正性及び国民の利便性のため、情報技術及びAIを利用することができる。
2 行政におけるAI及び自動判断システムの利用は、人間の尊厳、法の下の平等、情報自己決定権及び説明責任に反してはならない。
3 行政処分、給付、資格、審査、監視、評価その他国民の権利義務に重大な影響を及ぼす判断にAI又は自動判断システムを用いる場合、国民は、その概要、根拠、異議申立て及び人による審査を求める手続を保障される。
4 内閣及び行政機関は、AI及び情報技術の利用状況、委託先、データの取扱い、リスク評価及び監査結果について、法律の定めるところにより公開しなければならない。
第七十一条 行政監察及び内部統制
内閣及び行政機関は、違法、不正、浪費、利益相反、権限濫用、差別、ハラスメント及び記録管理の不備を防ぐため、内部統制を整備しなければならない。
2 行政に対する独立した監察制度を法律で設ける。
3 行政監察機関は、内閣及び行政機関から独立して調査を行い、必要な報告、是正勧告及び国会への報告を行うことができる。
4 行政監察機関の独立性、人事、予算及び権限は、法律により保障されなければならない。
第七十二条 行政責任及び辞任
内閣総理大臣及び国務大臣は、重大な違法行為、虚偽説明、公文書の改ざん又は隠蔽、重大な利益相反、職務上の著しい怠慢その他国民の信頼を著しく損なう行為があった場合、国会及び国民に対し、その責任を明らかにしなければならない。
2 国務大臣は、所管行政に重大な不正又は失敗があった場合、その原因、経過、再発防止策及び自己の責任について、国会に報告しなければならない。
3 責任の明確化は、単なる辞任によって終わるものではなく、記録の保存、事実の検証、損害の回復及び制度改善を含むものでなければならない。
第七十三条 三権による行政権の統制
内閣及び行政機関の権限は、危機管理、総合調整、国防、外交、経済安全保障、情報技術その他いかなる理由によって拡大される場合であっても、国会の監督及び裁判所の審査を免れない。
2 国会は、内閣及び行政機関の権限行使が、この憲法及び法律の範囲を超えないよう、審議、調査、承認、予算及び決算の審査その他の権能を誠実に行使しなければならない。
3 裁判所は、内閣及び行政機関の権限行使が、国民の権利、自由及び尊厳を不当に侵害しないよう、この憲法に基づく審査権を誠実に行使しなければならない。
4 内閣、国会及び裁判所は、互いにその権限を尊重しつつ、いずれか一つの権力が国民の自由及び尊厳を害するほどに肥大化しないよう、それぞれの責務を果たさなければならない。
◇ 現行憲法との比較
- 衆議院の解散権(第69条):
- 【現行】第7条(天皇の国事行為)を根拠に、内閣総理大臣がいつでも自由に(与党に有利なタイミングで)衆議院を解散できると解釈・運用されている。
- 【私案】内閣不信任案の可決時や、予算案などの重要法案が否決され「内閣が立ち行かなくなった場合」にのみ解散を限定し、首相の恣意的な解散権を剥奪した。
- 国務大臣の不訴追特権(第75条):
- 【現行】「内閣総理大臣の同意」がなければ大臣は在任中起訴されない。
- 【私案】特権の解除権を「内閣(身内)」から「国会(立法府)」へと移譲し、首相が不祥事を起こした身内を庇うことを不可能にした。
- 緊急事態条項(第73条の3):
- 【自民党案など】緊急事態において、内閣が法律と同等の効力を持つ政令を制定でき、広範な権限が集中する。
- 【私案】権限集中を認めつつも、「人権制約の最小限度・期間の限定・国会承認」という厳格な比例原則を憲法に明記し、独裁の芽を摘んだ。
- 政治資金と公文書の透明性(第75条の2):
- 【現行】規定なし(政治資金規正法などの法律レベルに留まる)。
- 【私案】政治団体・政党の財産公開と、内閣の公文書管理を「憲法上の義務」に格上げした。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の眼目は、「行政の肥大化」と「権力の私物化」に対する徹底した立憲主義的統制(歯止め)です。
長年、日本の首相は「衆議院の解散権」を伝家の宝刀として振りかざし、与党内の引き締めや、野党の準備が整っていない時期を狙った「党利党略の選挙」を行ってきました。
私案ではこれを固く禁じ、国会と内閣の健全な緊張関係を取り戻します。
また、外交交渉(関税等)の国会報告義務、公文書の保存、政治資金の透明化を憲法上の義務としたことは、「政治とカネ」や「公文書の改ざん・隠蔽」といった現代の政治腐敗に対する直接的な回答です。
権力は必ず腐敗するという前提に立ち、国民の監視の光が常に当たるよう制度設計を根本から改めました。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】強いリーダーシップを求める立場から(第69条関連)
「首相の自由な解散権を奪えば、新しい政策課題(増税や防衛力強化など)について、国民に直接信を問う機会が失われ、政治のダイナミズムやリーダーシップが弱体化するのではないか?」
- 【回答のロジック】 議院内閣制における解散とは、本来「内閣と国会が対立して国政が膠着した際、主権者(国民)の判断を仰いで決着をつけるための最終手段」です。
与党が選挙に勝つための「都合の良いタイミング作り」のツールではありません。
もし新しい政策について国民の信を問いたいのであれば、本私案で新設した第十一章「国民投票(直接民主制)」を用いるべきです。
解散権を制限することは、政権に対し、選挙という「脅し」ではなく、国会での「熟議と合意形成」によって統治を行うことを強いるものであり、これこそが真の議会制民主主義の姿です。
【反論2】危機管理の立場から(第73条の3関連) 「首都直下地震や他国からの武力攻撃など、一刻を争う未曾有の事態において、『必要最小限度』や『事前の国会承認』などの厳格な縛りをかけていては、内閣の初動が遅れ、国民の命を守れないのではないか? 自民党案のように包括的な権限を内閣に与えるべきではないか?」
- 【回答のロジック】 歴史上、民主主義が崩壊して独裁体制が誕生する最も多いパターンは、「国家の危機(あるいは作られた危機)」を理由に行政権に白紙委任の権限を与えた時です。
危機において迅速な対応が必要なのは当然であり、そのために国家危機事態の宣言を認めています。
しかし、いかなる危機下であっても「権力の行使は目的を達成するための最小限に留める」という『比例原則』は、立憲主義の絶対の防波堤です。
白紙委任(広範な権限集中)は、有事の混乱に乗じた人権弾圧や権力の居座りを招くため、憲法で厳重に禁じなければなりません。
【反論3】政治実務の立場から(第75条関連)
「大臣の不訴追特権の解除を国会に委ねれば、野党が嫌がらせ目的で根拠のない刑事告発や訴追承認要求を連発し、国政が麻痺するのではないか?」
- 【回答のロジック】「首相が身内を庇う(お手盛り)」という現在の構造的利益相反よりは、「開かれた国会での多数決」に委ねる方が、はるかに透明性が高く民主的です。
もし野党が全く根拠のない不当な訴追要求を乱発したとすれば、公開された国会の場で堂々とそれを否決し、その野党の不当な振る舞い自体を主権者である国民の厳しい評価(次の選挙での審判)に晒せばよいのです。
すべてを「国民の目の届く場所(国会)」に引きずり出すことが、権力の腐敗を防ぐ最大の消毒液となります。
第六章 司法

第七十四条 司法権
すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定める下級裁判所に属する。
2 裁判所は、この憲法、法律及び良心に従い、独立して裁判を行う。
3 裁判所は、国民の権利、自由及び尊厳を守り、国家権力がこの憲法の限界を超えないよう審査する責務を負う。
第七十五条 裁判官の独立と責任
裁判官は、その職権を行うにあたり、内閣、国会、政党、団体、企業、世論その他いかなる不当な影響も受けてはならない。
2 裁判官は、独立して裁判を行うとともに、判決、決定その他の判断について、法的理由を明らかにしなければならない。
3 裁判官の独立は、恣意的な判断、説明の放棄、職務怠慢又は責任回避を許すものではない。
第七十六条 最高裁判所の地位
最高裁判所は、すべての法律、命令、規則、処分その他国家行為がこの憲法に適合するかを判断する終審裁判所である。
2 最高裁判所は、この憲法の番人として、国民の権利、三権分立、選挙制度、行政権の行使、国防、緊急事態その他憲法上重大な問題について、必要な判断を避けてはならない。
3 最高裁判所は、政策の当否を自ら決定する機関ではない。ただし、政策又は国家行為がこの憲法の限界を超えているかどうかについては、判断する責務を負う。
第七十七条 違憲審査権の誠実な行使
裁判所は、具体的な争訟において、法律、命令、規則、処分その他国家行為がこの憲法に違反すると認めるときは、その効力を否定し、又は必要な救済を命じることができる。
2 裁判所は、国防、外交、財政、選挙、緊急事態その他高度に政治的な性質を有する事項であっても、国民の権利、自由及び尊厳、又は三権分立に関わる憲法上の問題について、審査を放棄してはならない。
3 裁判所は、政治部門の裁量を尊重する場合であっても、その裁量が憲法上許される範囲を超えていないかを審査しなければならない。
第七十八条 憲法上の救済
何人も、国又は地方公共団体その他公的権限を行使する者によって、この憲法上の権利を侵害されたときは、裁判所に救済を求める権利を有する。
2 国は、重大な憲法上の権利侵害について、迅速かつ実効的に救済を求めることができる手続を法律で整備しなければならない。
3 裁判所は、権利侵害が継続し、又は回復困難な損害を生じるおそれがある場合、法律の定めるところにより、仮の救済を命じることができる。
第七十九条 司法任命諮問委員会
裁判官の任命については、司法の独立、公正性、多様性及び能力を確保するため、独立した司法任命諮問委員会の審査を経なければならない。
2 司法任命諮問委員会は、裁判官、弁護士、検察官、学識経験者、国民の代表その他法律で定める者により構成する。
3 司法任命諮問委員会の構成、審査基準、議事、利益相反及び候補者推薦の手続は、透明でなければならない。
4 内閣は、司法任命諮問委員会の推薦を尊重しなければならず、裁判官の任命を政治的忠誠、政党関係又は特定勢力への近さによって行ってはならない。
第八十条 最高裁判所裁判官の任命前審査
最高裁判所裁判官及び最高裁判所長官の任命又は指名は、国会における審査及び承認を経なければならない。
2 国会は、前項の審査において、候補者の経歴、法的見識、憲法理解、主要な判断、利益相反、独立性及び人権感覚について、公開の手続により確認しなければならない。
3 候補者は、個別事件について予断を示すことを求められない。ただし、憲法、三権分立、基本的人権及び司法の役割に関する基本的見解について説明しなければならない。
第八十一条 国民審査
最高裁判所裁判官は、法律の定めるところにより、国民の審査を受ける。
2 国は、国民審査に先立ち、各裁判官の経歴、担当した主要事件、判決における多数意見、補足意見、反対意見、過去の国民審査結果その他国民が判断するために必要な情報を、分かりやすく提供しなければならない。
3 国民審査は、単なる形式であってはならず、国民が十分な情報に基づいて判断できる制度として整備されなければならない。
4 国民審査の手続、情報提供、投票方法、罷免の効力及び濫用防止については、法律で定める。
第八十二条 下級裁判所裁判官の任命及び評価
下級裁判所裁判官の任命、再任、配置及び昇進は、司法の独立、公正性、能力及び多様性に基づいて行われなければならない。
2 裁判官は、判決内容又は憲法判断を行ったことのみを理由として、不利益な人事上の扱いを受けてはならない。
3 裁判官の人事評価は、秘密の内部評価のみによって行われてはならず、その基準、手続及び不服申立ての制度は、法律で定める。
4 最高裁判所及び司法行政機関は、下級裁判所裁判官に対し、裁判内容に関する不当な指揮、圧力又は示唆をしてはならない。
第八十三条 裁判官の罷免及び懲戒
裁判官は、心身の故障により職務を行うことができない場合、重大な非行、職務上の著しい怠慢、明白な適格性の欠如又は重大な利益相反がある場合を除き、その身分を奪われない。
2 裁判官の罷免又は懲戒は、法律で定める公正な手続によらなければならない。
3 裁判官の罷免又は懲戒は、判決内容に対する政治的又は世論上の不満を理由として行われてはならない。
4 国民は、法律の定めるところにより、裁判官の重大な非行又は著しい職務怠慢について、調査又は罷免手続の開始を求めることができる。
第八十四条 裁判の公開及び判決理由
裁判の対審及び判決は、公開法廷で行う。
2 裁判所は、判決、決定その他重要な判断について、理由を明らかにしなければならない。
3 裁判記録、判決及び司法統計は、個人の私生活、安全、少年保護その他正当な利益を害しない範囲で、国民に利用しやすい形で公開されなければならない。
4 裁判所は、国民が司法を理解し、利用できるよう、判決及び手続に関する情報を分かりやすく提供するよう努めなければならない。
第八十五条 司法行政の透明性
最高裁判所は、司法行政に関する規則を定めることができる。
2 司法行政は、裁判の独立を守るために行われるものであり、裁判官の判断を統制し、又は司法の閉鎖性を維持するために用いられてはならない。
3 司法行政に関する人事、予算、会議、規則、統計及び方針は、法律の定めるところにより、透明性を確保しなければならない。
4 最高裁判所事務総局その他司法行政機関は、その権限、組織、意思決定及び裁判官人事への関与について、国民及び国会に対して説明責任を負う。
第八十六条 裁判を受ける権利
何人も、公平な裁判所において、適正で迅速な裁判を受ける権利を有する。
2 国は、経済的理由、障害、言語、国籍、地域、年齢、性別、性のあり方その他の事情により、裁判を受ける機会が不当に妨げられないよう、必要な制度を整備しなければならない。
3 法律扶助、通訳、合理的配慮、オンライン手続その他司法へのアクセスを保障する制度は、法律で定める。
第八十七条 行政事件及び公権力の審査
裁判所は、行政処分、行政指導、行政計画、行政不作為、情報公開、個人情報、AIによる行政判断その他公権力の行使について、法律の定めるところにより審査する。
2 行政機関は、裁判所による審査を免れるために、形式上の裁量、内部決定、非公式協議、行政指導又は秘密指定を用いてはならない。
3 国民の権利に重大な影響を及ぼす行政行為については、裁判所による実効的な審査及び救済が保障されなければならない。
第八十八条 緊急事態における司法審査
緊急事態においても、裁判所の機能及び司法審査は停止されない。
2 緊急事態における内閣、行政機関、国防軍又は地方公共団体の措置は、裁判所の審査を免れない。
3 緊急事態において国民の権利が制限された場合、裁判所は、その必要性、合理性、均衡性、期間及び救済の有無について審査しなければならない。
第八十九条 司法と国民の信頼
司法は、国民の信頼の上に成り立つ。
2 裁判所は、独立を守るとともに、国民に対する説明、透明性、利用しやすさ及び公正性を高める責務を負う。
3 国民は、司法の独立を尊重するとともに、司法がこの憲法上の責務を果たしているかを監視し、制度改善を求める権利を有する。
4 司法は、政治の主人ではなく、政治の下僕でもない。司法は、この憲法の門番として、国民の権利、自由及び尊厳を守る責務を負う。
◇ 現行憲法との比較
- 裁判官の任命プロセス(第79条・80条):
- 【現行】最高裁長官は内閣の指名、その他の裁判官は内閣が直接任命する。密室での人事決定であり、行政権(内閣)の意向が強く反映されやすい構造。
- 【私案】独立機関である「司法任命諮問委員会」の推薦を必須とし、さらに「国会の承認」を要件とすることで、内閣による人事権の独占と私物化を排除した。
- 違憲審査権と国民の監視(第81条):
- 【現行】違憲審査権の規定はあるが、最高裁が「統治行為論」などを盾に政治的判断を避け続けても、それを正す憲法上の仕組みが存在しない。
- 【私案】最高裁が「法の番人」としての役割を放棄していないか、国民が監視し、国会が検証・報告する権能を憲法上に明記し、司法に積極的な役割を促す。
- 下級裁判官への直接統制(第82条):
- 【現行】下級裁判官に対する国民の直接的な罷免・審査制度は存在しない。
- 【私案】著しい非行や職務遂行能力の欠如に対し、有権者の署名による「リコール(解職請求)制度」を導入し、司法のアカウンタビリティ(説明責任)を高めた。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の最大の狙いは、機能不全に陥っている「司法への民主的統制」の実質化です。
現在の最高裁裁判官の国民審査は、情報も乏しく、罷免された事例が一件もない「儀式」と化しています。
また、人事を内閣に握られているため、裁判所が政府(行政)に不利な判決を出しにくい「忖度(そんたく)」の構造が指摘されています。
本私案では、内閣の介入を防ぐ「司法任命諮問委員会」によって司法の『プロフェッショナルとしての独立性』を担保しつつ、国会の承認や、国民によるリコール請求権、最高裁の活動監視権という強力な手段を新設しました。
司法権力もまた主権者(国民)からの信託に基づくものであるという大原則に立ち返り、密室の権威主義から、国民に開かれた透明な司法へと脱皮させるための構造改革です。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】司法の独立を重んじる立場から(第82条関連)
「国民によるリコール(罷免請求)制度を導入すれば、裁判官が世論の顔色やポピュリズムを気にして、公正な法解釈ではなく『大衆受けする判決』を下すようになり、司法の独立が死滅するのではないか?」
- 【回答のロジック】 「司法の独立」とは、政治権力(内閣や与党)からの独立を意味するのであって、主権者たる国民の監視から完全に切り離された「特権階級化」を許すものではありません。
リコール制度は、判決の内容そのものに介入するものではなく、「著しい非行」や「明らかな人権感覚の欠如」など、例外的な事態に対する『最後の安全装置』です。
発動には「有権者の相当割合の署名」という極めて高いハードルを法律で設けるため、日常的なポピュリズムの介入は防ぎつつ、権力の暴走に対する絶対的な抑止力として機能します。
【反論2】制度の複雑化を懸念する立場から(第79条・81条関連)
「任命諮問委員会を作り、国会の承認を求め、さらに国会に最高裁の監視までさせれば、手続きが煩雑になり、司法と政治が癒着・対立して裁判所の機能がマヒするのではないか?」
- 【回答のロジック】 内閣が一人で密室で決める現状の「効率の良さ」は、司法が行政の追認機関(下請け)になり下がる危険と引き換えに成り立っています。
国会の承認や諮問委員会の関与は、複数の機関が権力を分散・牽制し合う「抑制と均衡(チェック・アンド・バランス)」の本来の姿です。
また、第81条の監視規定は個別の裁判への干渉を認めるものではなく、「最高裁が違憲審査権を怠慢なく行使しているか」というシステム全体の検証です。
この適度な「政治的・国民的緊張感」こそが、司法を本来の『法の番人』として覚醒させる起爆剤となります。
第七章 財政及び公共倫理

第九十条 財政民主主義
国の財政は、国会の議決に基づいて行われなければならない。
2 国及び地方公共団体の財政は、国民が納めた税その他の公的資金が、国民から信託された財産であることを前提として運営されなければならない。
3 国及び地方公共団体は、公的資金を、国民の生活、自由、権利、安全、福祉、教育、文化、環境及び将来世代の利益のために用いなければならない。
4 公的資金は、政党、政治家、行政機関、特定団体、企業又は個人の私的利益のために用いられてはならない。
第九十一条 租税法律主義
新たに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律の根拠を必要とする。
2 租税は、公平、明確、透明及び負担能力に応じた原則に基づかなければならない。
3 租税制度は、国民の生活を不当に圧迫し、又は特定の者、団体、企業、宗教法人その他の組織を不当に優遇し、若しくは不当に不利益に扱うものであってはならない。
4 国は、租税の目的、使途、負担の根拠及び将来への影響について、国民に分かる形で説明しなければならない。
第九十二条 予算
国の予算は、毎会計年度、内閣が作成し、国会に提出し、その審議及び議決を経なければならない。
2 予算案には、歳入、歳出、財源、債務、基金、補助金、委託費、予備費、将来負担及び地方公共団体への影響が、国民に分かる形で示されなければならない。
3 予算は、政策目的、支出先、金額、効果及び評価方法が明らかでなければならない。
4 内閣は、予算を用いて、国会の監督、司法の審査、報道の自由、国民の知る権利又は地方自治を不当に妨げてはならない。
第九十三条 決算及び検証
内閣は、国の収入及び支出について、毎会計年度、決算を作成し、会計検査院の検査を受け、国会に提出しなければならない。
2 国会は、決算を審査し、支出の適正、効果、不正、浪費、利益相反、将来負担及び制度改善の必要性を検証しなければならない。
3 決算の審査は、形式的な報告で終わってはならず、次年度以降の予算及び政策に反映されなければならない。
4 決算、検査結果及び国会による審査の内容は、国民に分かる形で公開されなければならない。
第九十四条 会計検査院
会計検査院は、国の収入、支出、契約、補助金、基金、政府関係機関、独立行政法人その他公的資金の使途を検査する独立機関である。
2 会計検査院は、内閣から独立してその職務を行う。
3 会計検査院は、必要な資料の提出、説明、調査及び検査を求めることができる。
4 会計検査院の人事、予算、権限及び独立性は、法律により保障されなければならない。
5 会計検査院は、検査結果を国会及び国民に報告しなければならない。
第九十五条 公金支出の透明性
国及び地方公共団体の公金支出は、目的、根拠、相手方、金額、契約方法、成果及び評価を明らかにしなければならない。
2 補助金、交付金、委託費、助成金、基金、公共事業その他公的資金の支出については、法律の定めるところにより、国民が確認できる形で公開されなければならない。
3 国及び地方公共団体は、公金支出について、政治的配慮、縁故、利益誘導、選挙目的、団体支配又は不透明な調整により、特定の者を不当に優遇してはならない。
4 公金支出に関する記録は、作成し、保存し、改ざん、隠蔽又は不当な廃棄をしてはならない。
第九十六条 公共契約
国及び地方公共団体が行う契約は、公正、透明、競争性、品質、安全、労働条件、環境及び地域社会への影響を考慮して行われなければならない。
2 公共契約においては、談合、癒着、天下り、利益相反、過度な中抜き、不当な再委託及び労働者への不公正な扱いを防止しなければならない。
3 公共契約の相手方、契約金額、選定理由、再委託の状況及び成果は、法律の定めるところにより公開されなければならない。
4 国及び地方公共団体は、公共契約を通じて、特定の企業、団体、政党、政治家又は外国勢力に不当な利益を与えてはならない。
第九十七条 予備費及び基金
予備費及び基金は、法律又は国会の議決に基づき、必要な範囲で設けることができる。
2 予備費及び基金は、国会の審議を避けるため、又は使途を不明確にするために用いられてはならない。
3 予備費及び基金の使用については、その目的、金額、相手方、残高、効果及び将来負担を、国会及び国民に報告しなければならない。
4 長期間使用されない基金、目的を失った基金又は不透明な基金については、法律の定めるところにより、廃止、縮小又は見直しを行わなければならない。
第九十八条 財政の持続可能性と将来世代
国及び地方公共団体は、現在の国民生活を守るとともに、将来世代に過度な財政的負担を残さないよう努めなければならない。
2 国は、国債、借入金、保証債務、社会保障負担、インフラ維持費その他将来世代に影響を及ぼす財政上の負担について、国民に分かる形で示さなければならない。
3 財政の健全性は、国民の生活、福祉、教育、医療、安全及び人間の尊厳を不当に損なう口実として用いられてはならない。
4 財政政策は、現在世代と将来世代との公正な負担及び利益の配分に配慮しなければならない。
第九十九条 公的資金と団体の公共倫理
国又は地方公共団体から公的資金を受ける団体、企業、法人その他の者は、その資金の使途、経理、成果及び利益相反について、法律の定めるところにより説明責任を負う。
2 公的資金を受ける者は、その資金を、本来の目的に反して、政治活動、選挙活動、宗教活動、私的利益、外国勢力の利益又は不透明な再配分のために用いてはならない。
3 国及び地方公共団体は、公的資金の交付を通じて、特定の思想、信条、宗教、政治的立場又は団体活動を強制してはならない。
第百条 宗教法人及び公共性を有する法人の財政責任
宗教法人その他公共性を有する法人は、信教、結社及び活動の自由を保障される。
2 前項の自由は、財産、収益、寄附、支出、会計又は法人運営について、法の下の平等、租税公平及び公共倫理に基づく義務を免れる理由とはならない。
3 宗教法人その他公共性を有する法人の収益、財産、寄附、支出及び会計については、法律の定めるところにより、適正な課税、報告、監査及び公開の制度を設ける。
4 宗教法人その他公共性を有する法人は、信者、構成員、寄附者、未成年者、家族又は地域社会に対し、財産上、精神上又は社会上の不当な支配をしてはならない。
5 国及び地方公共団体は、特定の宗教法人又は公共性を有する法人に対し、政治的又は行政的理由により、不当に利益を与え、又は不当に圧迫してはならない。
第百一条 政党、政治団体及び政治資金
政党、政治団体、国会議員及び地方公共団体の議員は、その財産、経理、寄附、支出、政治広告、関係団体及び利益相反について、国民に分かる形で公開しなければならない。
2 政治資金の収入及び支出は、記録され、保存され、検証可能でなければならない。
3 政治資金は、虚偽記載、迂回献金、名義貸し、不透明な団体間移転、外国勢力からの不当な影響又は公的資金の流用により、歪められてはならない。
4 政党、政治団体及び政治家は、政治資金を通じて、国民に対する説明責任を免れてはならない。
第百二条 外国勢力からの独立
国会議員、地方公共団体の議員、政党、政治団体、公務員、公的権限に関わる者及び公的資金を受ける者は、外国勢力による不当な影響、資金提供、指示、利益供与又は情報操作から独立していなければならない。
2 外国勢力との関係、資金、契約、助言、便宜供与その他職務に影響を及ぼすおそれのある事項については、法律の定めるところにより、記録し、必要な範囲で公開しなければならない。
3 この条の規定は、正当な国際交流、外交、学術、文化、経済活動又は市民交流を不当に妨げるものではない。
第百三条 公職者の財産及び利益相反
国会議員、地方公共団体の議員、国務大臣、主要な公務員その他法律で定める公職者は、その財産、収入、贈与、株式、役員兼職、親族又は関係団体を通じた利益相反について、法律の定めるところにより公開しなければならない。
2 公職者は、自己、親族、支援者、関係団体又は実質的に支配する法人の利益のために、公的権限又は公的情報を用いてはならない。
3 公職者は、その職務に関し、民間団体、企業、宗教団体、労働団体、外国勢力その他特定の者から不当な利益を受けてはならない。
第百四条 天下り及び回転ドアの防止
国及び地方公共団体は、公務員、政治家、行政機関の幹部、規制機関の職員その他公的権限に関わる者が、その職務上の権限又は情報を用いて、退職後又は在職中に特定の企業、団体又は個人へ不当な利益を与えることを防止しなければならない。
2 公的権限に関わる者の再就職、兼職、顧問就任、講演報酬、委託契約その他利益関係については、法律の定めるところにより、制限、届出、審査及び公開の制度を設ける。
3 この条の規定は、正当な職業選択の自由を不当に制限するものではない。ただし、公的権限を私的利益に変える行為は許されない。
第百五条 公共倫理と国民の監視
国及び地方公共団体の財政、会計、契約、補助金、政治資金、公共性を有する法人及び公職者の利益相反について、国民は、法律の定めるところにより、情報公開、監査請求、調査請求及び司法上の救済を求める権利を有する。
2 国は、国民が公的資金の流れを確認し、理解し、監視できるよう、分かりやすく利用しやすい公開制度を整備しなければならない。
3 公共倫理に反する行為が明らかになった場合、国及び地方公共団体は、事実の解明、責任の明確化、損害の回復、再発防止及び制度改善を行わなければならない。
4 公的資金を扱う者は、国民の信託に応える責務を負う。
◇ 現行憲法との比較
- 皇室の財産管理(第88条):
- 【現行】「すべて皇室財産は、国に属する。
すべて皇室の費用は、予算に計上して国会の議決を経なければならない」とされ、皇室には財産上の自主性が一切ない。 - 【私案】皇室の財産管理の自主性を認めつつ、同時に「私的な宗教的行為(宮中祭祀など)」や収益に供される財産には、一般国民と同じく納税義務を課すことで、特権化を防ぐ。
- 【現行】「すべて皇室財産は、国に属する。
- 宗教法人への課税義務(第89条):
- 【現行】公金の支出制限のみが規定されており、宗教法人への課税に関する言及はない。
結果として、法律レベルで過度な非課税特権が与えられている。 - 【私案】宗教法人の収益事業および保有財産に対する課税を「憲法上の義務」として明記し、他の法人との完全な平等を要求する。
- 【現行】公金の支出制限のみが規定されており、宗教法人への課税に関する言及はない。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の最大の狙いは、「国家と宗教」および「国家と皇室」の財政的な関係を近代的な「法の下の平等」へと適応させることです。
現行憲法下では、宗教法人が巨大な不動産や莫大な資産(お布施など)を非課税で保有し続けることが可能であり、これが不透明な資金蓄積や一部のカルト的な団体の温床となってきました。
本私案は、第89条で宗教法人への課税を憲法レベルで義務化することで、この「聖域化された税の抜け穴」を完全に塞ぎます。
さらに、第88条において天皇・皇族を「私的な神道祭祀の長」として位置づけた(第4条との連動)ことに伴い、国事行為に関する公金(国費)と、私有財産(内廷費など)を厳格に切り分けます。
そして、宗教活動に付随する私有財産には一般の宗教法人と同様に納税義務を負わせることで、皇室であっても「納税の義務」という市民の責務から逃れないという極めて透明性の高い構造を確立しました。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】宗教の自由・伝統保護の立場から(第89条関連)
「宗教法人への課税を憲法で義務化すれば、経営の苦しい地域の小さな神社や寺院が維持できなくなり、日本の伝統文化が破壊される。また、信教の自由に対する重大な侵害ではないか?」
- 【回答のロジック】「信教の自由(心の中の信仰)」は絶対的に保障されますが、宗教団体の「経済活動」は世俗の行為であり、特別扱いする理由はありません。
税金を免除されるということは、実質的に「国家から他の納税者の税金で補助金をもらっている」ことと同じです。
伝統文化の保護が必要であれば、宗教という隠れ蓑による一律の非課税特権に頼るのではなく、文化財保護法などの「透明な公的支援(文化財としての補助金など)」によって維持すべきです。
収益や財産を隠し持つ不透明な宗教団体と、純粋な信仰の場を切り分けるためにも、課税による経営の透明化は不可欠です。
【反論2】皇室の尊厳と財政統制の立場から(第88条関連)
「皇室に財産の自主管理を認めれば、戦前のように皇室が巨大な財閥(莫大な資産家)化する恐れがある。逆に、天皇に税金を納めさせるのは尊厳を傷つける行為ではないか?」
- 【回答のロジック】戦前の皇室の巨大財産化は「非課税特権」とセットであったからこそ起きた現象です。
本私案のように、自主管理を認めつつも「適正な課税(相続税なども含む)」を行えば、一般の富裕層と同じく富の過度な集中は自然に防ぐことができます。
また、「納税」は尊厳を傷つける罰ではなく、国家の構成員としての誇り高き責務です。
天皇・皇族が、自らの私的行為に基づく資産に対して正当に税を納める姿こそが、特権に胡坐をかかない「国民と苦楽を共にする象徴」としての尊厳を真に高めるものとなります。
第八章 地方自治及び首都機能

第百六条 地方自治の本旨
地方自治は、住民の意思、地域の自立、補完性の原則及び民主的統制に基づいて保障される。
2 地方公共団体は、住民の生活、福祉、教育、医療、防災、環境、文化、産業及び地域社会の維持発展について、法律の定めるところにより自治権を有する。
3 国は、地方公共団体の自主性及び地域の実情を尊重しなければならない。
4 地方自治は、国の行政事務を単に下請けさせる制度であってはならない。
第百七条 住民自治
地方公共団体の長、議会の議員その他法律で定める公職は、住民の選挙により選ばれる。
2 住民は、法律の定めるところにより、条例の制定又は改廃、監査、住民投票、解職その他地方自治に参加する権利を有する。
3 地方公共団体は、政策決定、予算、決算、契約、公有財産、補助金、都市計画及び公共事業について、住民に分かる形で情報を公開しなければならない。
4 地方公共団体は、地域に暮らす者の多様な声を尊重し、年齢、障害、国籍、性別、性のあり方、経済状況その他の事情により、住民参加の機会を不当に狭めてはならない。
第百八条 団体自治
地方公共団体は、法律の範囲内で、条例を制定し、その事務を処理し、財産を管理する権限を有する。
2 国は、地方公共団体に対し、その事務を処理するために必要な権限、財源、人員及び情報を保障しなければならない。
3 国は、財源又は人員を伴わない事務を、地方公共団体に一方的に負わせてはならない。
4 国と地方公共団体との関係は、上下関係ではなく、国民の生活を支えるための役割分担に基づくものでなければならない。
第百九条 地方財政
地方公共団体の財政は、住民の信託に基づき、透明、公正かつ持続可能に運営されなければならない。
2 地方公共団体は、その予算、決算、基金、債務、補助金、契約、公有財産及び将来負担について、住民に分かる形で公開しなければならない。
3 国は、地方公共団体が住民生活に必要な行政サービスを提供できるよう、地方税、地方交付税、補助金その他必要な財源保障の制度を整備しなければならない。
4 地方財政の健全性は、住民の生活、福祉、医療、教育、防災、地域交通及び人間の尊厳を不当に損なう口実として用いられてはならない。
第百十条 国と地方の協議
国は、地方公共団体の事務、財源、組織、住民生活又は地域社会に重大な影響を及ぼす政策を定める場合、法律の定めるところにより、地方公共団体及び住民の意見を聴く手続を設けなければならない。
2 国と地方公共団体との間に争いがある場合には、公正で独立した調整及び審査の手続を設ける。
3 国は、地方公共団体の自治権を制限する場合、その必要性、合理性、範囲及び期間を明らかにしなければならない。
第百十一条 首都及び首都機能
首都及び首都機能の配置は、法律で定める。
2 国は、災害、安全保障、感染症、情報通信障害その他国家機能に重大な支障を及ぼす事態に備え、首都機能の分散、補完及び継続の体制を整備しなければならない。
3 首都機能は、特定の都市又は地域に過度に集中してはならない。
4 国は、首都機能の配置及び分散について、地方自治、地域の均衡ある発展、行政の継続性、国民の利便性及び安全保障を考慮しなければならない。
第百十二条 大都市制度
国は、大都市制度について、人口、財政、行政能力、治安、防災、周辺地域との関係及び住民自治を考慮し、法律で定める。
2 政令指定都市その他大都市に対しては、その行政需要及び能力に応じ、必要な権限及び財源を移譲しなければならない。
3 大都市制度は、周辺自治体又は地方圏から人、財源、産業及び行政機能を過度に吸い上げる仕組みであってはならない。
4 国及び地方公共団体は、大都市と地方圏との間における過度な格差及び一極集中を是正するよう努めなければならない。
第百十三条 地域社会及び生活基盤
国及び地方公共団体は、地域社会の維持、生活交通、医療、福祉、教育、防災、通信、文化、産業及び自然環境の保全に努めなければならない。
2 人口減少、高齢化、過疎、災害、産業衰退その他の事情により地域社会の維持が困難となる場合、国及び地方公共団体は、住民の尊厳ある生活を守るため、必要な支援を行わなければならない。
3 地域の再編、統合、広域連携又は行政区域の変更を行う場合には、住民の意思、生活への影響、歴史、文化及び地域共同体への配慮を欠いてはならない。
第百十四条 地方における公正と透明性
地方公共団体の長、議会の議員、職員及び関係団体は、住民全体の利益のために職務を行わなければならない。
2 地方公共団体における政治資金、契約、補助金、指定管理、外郭団体、第三セクター、公共事業及び利益相反については、法律及び条例により透明性を確保しなければならない。
3 地方公共団体は、地域の有力者、特定団体、企業、宗教団体、労働団体、外国勢力その他特定の者による不当な支配又は影響を受けてはならない。
4 住民は、地方公共団体の財政、契約、政策決定及び公的記録について、監視し、情報公開を求め、必要な救済を求める権利を有する。
◇ 現行憲法との比較
- 首都の定義と一極集中リスク(第92条の2):
- 【現行】首都に関する規定がなく、非常時の首都機能バックアップについても憲法上の要請はない。
- 【私案】首都を東京と明記しつつ、同時に国家の生存戦略(危機管理)として、首都機能の分散と代替拠点の確保を憲法上の義務として国に課した。
- 地方分権と権能移管(第92条の3):
- 【現行】「地方自治の本旨に基づく」という曖昧な表現のみで、中央から地方への権限委譲を強制する力がない。
- 【私案】「地方分権の推進」を憲法で明確に命じ、特に政令指定都市などの大都市に対しては、その能力に応じた強力な権能(権限と財源)の中央からの移管を法整備するよう義務付けた。
- 地方議員の透明性と独立性(第95条の2):
- 【現行】地方議員の倫理や政治資金に関する憲法上の規定はない。
- 【私案】権限が強化される地方議員に対し、特定の利益団体や外国勢力からの独立と、経理・資産の完全公開を憲法上の義務として課し、地方政治の腐敗を防ぐ。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の最大の意図は、明治以来続く「強力な中央集権体制」を解体し、自立した地域がネットワークで結ばれる「多極分散型国家」への転換です。
第92条の3は、地方自治体を単なる行政の末端組織ではなく、自らルールを作り、自ら財源を管理する「小さな政府」へと引き上げるための法的根拠です。特に大都市(政令指定都市など)への権能移管を明記したことは、東京に依存せずとも、各地方ブロックを牽引する強力なエンジンの創出を目指しています。
また、地方に権力とカネを移せば、当然ながら「地方のボス(土着の権力者)」による利権化や腐敗のリスクが高まります。
そのため、第95条の2で地方議員に極めて厳格な透明性(政治とカネの公開義務)と独立性を要求しました。
「権力(自治)を与える代わりに、徹底したガラス張りの責任を負わせる」というバランスをとっています。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】行政の効率と平等性を重んじる立場(中央集権派)から
「地方に強力な権限と財源を移譲すれば、豊かな自治体と貧しい自治体で、教育や医療、福祉などの行政サービスに深刻な『地域格差』が生まれる。国民の平等を担保するには中央集権を維持すべきではないか?」
- 【回答のロジック】国が全国一律の基準(ナショナル・ミニマム)を維持することは重要ですが、過度な中央集権による「平等」は、結果として「全国一律の非効率(画一的な悪平等)」を生み出しています。
人口構成や主要産業、抱える課題は地域によって全く異なります。
中央官庁が全国を一律に管理するモデルは、複雑化する21世紀の社会ではすでに限界を迎えています。
自らの地域の課題を最も理解している地方自治体が、権限と財源を持って独自に最適解を出す「競争と多様性」こそが、結果として国全体のレジリエンス(回復力)と活力を高めます。
【反論2】経済成長と東京の国際競争力を重視する立場から
「首都機能の分散化や地方への権限移管は、多額のコストがかかるだけでなく、東京の『集積のメリット(国際的な経済競争力)』を削ぎ落とし、日本全体の国力を低下させるのではないか?」
- 【回答のロジック】平時における「集積の効率性」は、有事(パンデミック、首都直下地震、他国からの攻撃など)においては一瞬で国家機能が麻痺する「致命的な脆弱性」へと反転します。
第92条の2で規定した首都機能の分散は、単なる地方創生のためのバラマキではなく、国家が生き残るための必須の「安全保障コスト(保険)」です。
東京だけにリスクと機能を集中させるのではなく、各地方に強力な中核都市(自立したエンジン)を複数育成することこそが、真の国力(持続可能性)の強化に繋がります。
第九章 緊急事態

第百十五条 緊急事態の原則
国は、大規模災害、武力攻撃、重大な感染症、重要インフラの大規模障害、食料又はエネルギーの深刻な供給危機その他国民の生命、身体、生活及び国家の存立に重大な危険が生じた場合、法律に基づき、必要な緊急措置をとることができる。
2 緊急措置は、国民の生命、身体、生活、自由及び財産を守るためにのみ行われる。
3 緊急措置は、必要性、合理性、均衡性、期間の限定、国会の監督、司法の審査、記録保存及び事後検証の原則に従わなければならない。
4 緊急事態は、この憲法の停止又は国民主権の停止を意味しない。
第百十六条 緊急事態の宣言
内閣は、緊急事態が発生し、通常の法律及び行政手続のみでは国民の生命、身体又は生活を守ることが著しく困難である場合に限り、法律の定めるところにより、緊急事態の宣言を行うことができる。
2 緊急事態の宣言には、その理由、対象となる地域、必要な措置、期間、国民の権利への影響及び解除の基準を明らかにしなければならない。
3 内閣は、緊急事態の宣言を行ったときは、ただちに国会に報告し、承認を求めなければならない。
4 国会の承認を得られない緊急事態の宣言は、ただちに効力を失う。
第百十七条 期間の限定
緊急事態の宣言の期間は、法律で定める短い期間に限られなければならない。
2 緊急事態の宣言を延長するには、その都度、国会の承認を必要とする。
3 内閣は、緊急事態を継続する必要がなくなったときは、ただちに宣言を解除しなければならない。
4 緊急事態の宣言は、政権維持、選挙延期、国会審議の回避、行政責任の隠蔽又は国民の批判の抑圧のために用いてはならない。
第百十八条 国会の機能維持
緊急事態においても、国会の機能は維持されなければならない。
2 国会は、緊急事態における内閣及び行政機関の措置について、審議、承認、調査、修正、停止及び事後検証を行う権限を有する。
3 緊急事態において国会の通常の開会が困難である場合、法律の定めるところにより、オンライン審議、分散審議、代理出席その他国会機能を維持するための特別の手続を設けることができる。
4 緊急事態を理由として、内閣が国会の召集、審議、調査又は議決を不当に妨げてはならない。
第百十九条 司法審査の維持
緊急事態においても、裁判所の機能及び司法審査は停止されない。
2 国民は、緊急措置によって権利又は自由を侵害されたときは、裁判所に救済を求める権利を有する。
3 裁判所は、緊急措置について、その必要性、合理性、均衡性、期間、対象範囲及び救済の有無を審査しなければならない。
4 緊急事態を理由として、裁判を受ける権利、弁護を受ける権利又は人身の自由に対する救済を不当に制限してはならない。
第百二十条 基本的人権の本質
緊急事態においても、人間の尊厳、生命に対する権利、拷問及び残虐な取扱いの禁止、思想及び良心の自由、信教の自由の核心、適正手続、裁判を受ける権利並びに差別されない権利の本質は侵されない。
2 緊急措置により国民の自由又は権利を制限する場合、その制限は、具体的な危険に対応するために必要最小限度でなければならない。
3 緊急措置は、特定の思想、信条、宗教、民族、国籍、性別、性のあり方、障害、疾病、社会的身分又は政治的意見を理由として、差別的に行われてはならない。
4 国は、緊急措置によって特に困難を受ける者に対し、必要な支援及び救済を行わなければならない。
第百二十一条 移動、営業、集会その他の制限
国は、緊急事態において、国民の生命、身体又は生活を守るために必要な場合、法律に基づき、移動、営業、集会、施設利用、物資の配分その他の行動について、必要最小限度の制限を行うことができる。
2 前項の制限は、その理由、対象、期間、地域及び解除基準を明らかにしなければならない。
3 国は、制限により生活、営業、雇用、教育、医療、介護その他に重大な影響を受ける者に対し、必要な補償、給付、支援又は代替措置を講じなければならない。
4 緊急措置は、国民を罰するためではなく、危険を避け、生命と生活を守るために行われなければならない。
第百二十二条 財産の使用及び補償
国又は地方公共団体は、緊急事態において、国民の生命、身体又は生活を守るために真に必要な場合、法律の定めるところにより、物資、施設、土地、設備、交通、通信その他必要な財産又は役務の提供を求めることができる。
2 前項の措置は、必要最小限度で行われなければならず、特定の者に過度な負担を課してはならない。
3 財産又は役務の提供を求められた者には、正当な補償が行われなければならない。
4 国又は地方公共団体は、緊急事態を理由として、財産権を不当に侵害し、又は特定の企業、団体若しくは個人に不当な利益を与えてはならない。
第百二十三条 情報公開及び説明責任
国及び地方公共団体は、緊急事態に関する情報、危険の程度、政策判断の根拠、専門的知見、統計、被害状況、支援制度及び今後の見通しについて、国民に分かる形で速やかに説明しなければならない。
2 国及び地方公共団体は、緊急事態を理由として、不都合な情報、失敗、被害、統計、会議記録又は専門家の意見を不当に隠してはならない。
3 国及び地方公共団体は、虚偽情報、混乱、差別、買い占めその他国民生活に重大な害を及ぼす情報上の危険に対し、正確な情報提供、教育及び必要な対策を行うことができる。
4 前項の対策は、検閲、思想統制、報道統制又は政府に対する正当な批判の抑圧に用いられてはならない。
第百二十四条 記録保存及び事後検証
国及び地方公共団体は、緊急事態における意思決定、会議、専門家意見、命令、予算執行、契約、物資配分、国防軍の行動、情報発信及び権利制限に関する記録を作成し、保存しなければならない。
2 緊急事態に関する記録は、改ざん、隠蔽又は不当な廃棄をしてはならない。
3 緊急事態が終了した後、国会、会計検査院、独立監察機関その他法律で定める機関は、緊急措置の必要性、効果、被害、補償、財政、権利制限及び責任について検証しなければならない。
4 国は、検証結果に基づき、被害の回復、責任の明確化、制度改善及び再発防止を行わなければならない。
第百二十五条 地方公共団体との協力
緊急事態において、国及び地方公共団体は、住民の生命、身体、生活及び地域社会を守るため、相互に協力しなければならない。
2 国は、地方公共団体に対し、必要な情報、権限、財源、人員、物資及び技術的支援を提供しなければならない。
3 国は、緊急事態を理由として、地方自治を不当に制限し、又は地方公共団体を単なる命令の受け手として扱ってはならない。
4 地方公共団体は、地域の実情に即して、住民に最も近い立場から必要な措置を行う責務を負う。
第百二十六条 国防軍及び公的機関の活動
緊急事態において、国防軍、警察、消防、海上保安、医療機関その他公的機関は、法律の定めるところにより、国民の生命、身体及び生活を守るために活動することができる。
2 国防軍の活動は、文民統制、国会の監督、法律の根拠及び必要最小限度の原則に従わなければならない。
3 国防軍、警察その他公的機関は、緊急事態を理由として、政権維持、思想統制、国民の正当な権利行使の抑圧又は特定勢力の利益のために用いられてはならない。
4 緊急事態における公的機関の活動については、隊員、職員及びその家族の安全、健康、休息、補償及び精神的支援が保障されなければならない。
第百二十七条 選挙及び民主的手続
緊急事態においても、選挙及び民主的手続は、可能な限り維持されなければならない。
2 選挙の実施が物理的に著しく困難である場合には、法律の定めるところにより、必要最小限度の延期又は代替手続を設けることができる。
3 前項の延期又は代替手続は、国会の承認を必要とし、その理由、期間及び再実施の時期を明らかにしなければならない。
4 緊急事態を理由として、政権の任期を不当に延長し、選挙を回避し、又は国民の政治参加を抑圧してはならない。
第百二十八条 緊急事態の濫用禁止
緊急事態の宣言及び緊急措置は、政権維持、政治的批判の抑圧、選挙の回避、国会審議の停止、司法審査の回避、公文書の隠蔽、財政支出の不透明化又は特定勢力への利益供与のために用いてはならない。
2 緊急事態において行われた措置がこの憲法又は法律に違反すると認められる場合、国会、裁判所及び独立監察機関は、必要な是正、救済、責任追及及び再発防止を行わなければならない。
3 緊急事態に関する権限を濫用した者は、法律の定めるところにより、政治上、行政上、民事上又は刑事上の責任を負う。
◇ 現行憲法との比較
- 国会発議のハードル(第96条):
- 【自民党案など】時代の変化に対応しやすくするため、国会の発議要件を「各議院の過半数」に引き下げる(軟性憲法化する)主張が長年存在する。
- 【私案】国会(政治家)が憲法を変えるための要件は、「各議院の総議員の三分の二以上」という極めて厳しいハードル(硬性憲法)を現行のまま完全に維持する。
- 改正発議のルート(第96条と第100条の連動):
- 【現行】憲法改正を発議できるのは「国会(政治家)」のみであり、国民は国会が発議したものに対して「Yes/No」を答えることしかできない。
- 【私案】政治家による発議ルート(第96条)を厳格に保つ一方で、主権者たる国民が自ら改正案を発議できる「憲法イニシアチブ(第100条)」のルートを新設し、改正への扉を主権者の側にのみ広く開放した。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章の最大の意図は、「憲法は誰を縛るものか」という立憲主義の大原則を死守することです。
憲法とは、主権者(国民)が国家権力(政治家や官僚)の暴走を縛るためのルールブックです。
もし、権力を行使する側である「国会の過半数(時の政権与党)」だけで簡単にルールを変更できてしまえば、憲法は単なる「法律」へと格下げされ、権力者を縛る鎖としての機能は完全に死滅します。
だからこそ、第96条の「三分の二」という高い壁は、一時的な熱狂やポピュリズムによる「権力側の都合の良いルール変更」を防ぐための不動の防波堤として維持されなければなりません。
その一方で、時代の変化に合わせて憲法をアップデートする必要性は当然存在します。
本私案では、政治家にとっての壁(第96条)は高く保ったまま、憲法の真の所有者である国民が、自らの手でルールを書き換えるための仕組み(第100条:直接民主制)を新たに用意しました。
「権力者には厳しく、主権者には開かれている」という、真の民主国家の構造を完成させています。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】改憲推進・現実主義の立場から(第96条関連)
「三分の二というハードルが高すぎるため、戦後一度も憲法が改正されず、時代遅れになってしまったのではないか? まずは第96条のハードルを『過半数』に下げて、国民が憲法改正に慣れる環境を作るべきではないか?」
- 【回答のロジック】 手続きのハードルを下げる(過半数にする)ということは、時の政権与党が「自分たちの権力に都合の良いようにゲームのルール(憲法)を書き換えられる」ことを意味し、立憲主義の自己矛盾(自殺行為)を引き起こします。
日本でこれまで改憲が一度も行われなかったのは、ハードルが高すぎたからではなく、「国民の大多数が本当に望むような改正案」を国会が提示してこなかった(あるいは意見が割れるテーマばかりを争点にした)からです。
国民が本当に改憲を望むのであれば、新設された「憲法イニシアチブ(第100条)」を通じて、国会を経由せずに直接変えることができます。
権力者側のハードルを下げる必要は一切ありません。
【反論2】代議制民主主義を重んじる立場から(第100条関連)
「国民が直接憲法改正を発議できるとなると、複雑な憲法体系を理解していない大衆の感情論によって、国家の根幹が安易に書き換えられてしまう『衆愚政治』に陥るのではないか?」
- 【回答のロジック】 たしかに直接民主制にはポピュリズムのリスクが伴います。
しかし、国会(代議制)にすべてを委ねた結果、政治家にとって都合の悪い改革(世襲の制限や政治資金の透明化など)が長年放置されてきたのもまた事実です。
このリスクを相殺するため、本私案では第102条において「客観的情報の提供義務」や「外国勢力による認知戦(フェイクニュース)からの保護」を国家に課しています。
国民を「愚かな大衆」と見下して権限を奪うのではなく、国民が「徳」と「実践知」を育み、熟慮の上で判断できる健全な情報空間(アゴラ)を整備することこそが、市民国家の進むべき道です。
第十章 憲法保障及び国民による統制

第百二十九条 憲法保障の主体
この憲法を保障する最終の主体は、日本国民である。
2 国民は、国家権力がこの憲法に従って行使されているかを知り、監視し、意見を述べ、是正を求める権利を有し、また民主的社会を維持するためにその責務を負う。
3 国、地方公共団体及び公的権限を行使する者は、国民による憲法上の監視、参加及び責務の遂行を不当に妨げてはならない。
4 前二項の責務は、国が国民に対し、特定の政治的意見、政党支持、政治活動又は思想表明を強制し、又はこれを行わないことを理由に不利益を課す根拠として用いられてはならない。
第百三十条 情報公開請求権
国民は、国及び地方公共団体に対し、公文書、会計、政策決定過程、契約、統計、会議記録、行政判断、国防及び緊急事態に関する記録その他公的情報の公開を求める権利を有する。
2 情報公開は、国民が国家権力を監視し、政治に参加し、自己の権利を守るための基礎である。
3 国及び地方公共団体は、公開を原則とし、非公開を例外としなければならない。
4 非公開とする場合には、法律の根拠、理由、範囲及び期間を明らかにしなければならない。
第百三十一条 公文書及び記録の保存
国及び地方公共団体は、公的意思決定、政策形成、会議、交渉、予算、契約、行政処分、国防、外交、緊急事態及び国民の権利に関わる記録を作成し、保存しなければならない。
2 公文書及び公的記録は、国民共有の知的資源であり、民主的統制、歴史的検証及び将来世代への責任の基礎である。
3 公文書及び公的記録の改ざん、隠蔽、不当な廃棄、虚偽作成又は不存在を装う行為は、してはならない。
4 公文書及び公的記録の保存、公開、非公開、移管及び廃棄については、独立した監視を受ける制度を法律で定める。
第百三十二条 請願、意見表明及び是正要求
国民は、国又は地方公共団体に対し、法律、政策、行政処分、公金支出、公文書管理、権利侵害その他公的事項について、請願、意見表明、調査要求、是正要求及び制度改善の提案を行う権利を有する。
2 国及び地方公共団体は、前項の求めを誠実に受け止め、必要な範囲で回答しなければならない。
3 国民は、請願、意見表明又は是正要求を行ったことを理由として、不利益な扱いを受けない。
第百三十三条 独立監察機関
国は、行政、国防、公文書、個人情報、AI利用、政治資金、公金支出、公共契約、緊急事態その他公的権限の行使を監察するため、法律の定めるところにより、独立した監察機関を設ける。
2 独立監察機関は、内閣、行政機関、政党、企業、団体その他特定の勢力から独立して職務を行う。
3 独立監察機関は、必要な調査、資料提出要求、勧告、報告及び国会への意見提出を行うことができる。
4 独立監察機関の人事、予算、権限及び独立性は、法律により保障されなければならない。
第百三十四条 公益通報及び内部告発の保護
国、地方公共団体、企業、団体その他公共性を有する組織において、違法、不正、隠蔽、権限濫用、公金の不適切使用、重大な危険又は人権侵害を知った者は、法律の定めるところにより、通報し、保護を受ける権利を有する。
2 公益通報を行った者は、通報を理由として、解雇、降格、配置転換、嫌がらせ、脅迫、契約解除その他不利益な扱いを受けない。
3 国は、公益通報が適切に調査され、必要な是正及び再発防止が行われる制度を整備しなければならない。
第百三十五条 国民の憲法参加
国民は、選挙、国民投票、国民発案、請願、情報公開請求、監査請求、司法上の救済、意見表明その他法律で定める手続により、この憲法の運用に参加する権利を有する。
2 国及び地方公共団体は、国民が憲法、法律、政治、行政、司法、財政及び地方自治について理解し、参加できるよう、必要な情報提供及び教育の機会を整備しなければならない。
3 憲法に関する教育は、特定の政治思想、政党、宗教又は国家観を国民に強制するものであってはならない。
第百三十六条 憲法の濫用禁止
この憲法に定める権利、責務、国家機関の権限、緊急事態、国防、公共の利益又は将来世代への責任は、国民の自由、尊厳及び民主的統制を破壊する目的で用いられてはならない。
2 いかなる国家機関、団体又は個人も、この憲法の名を借りて、国民主権、基本的人権、権力分立、法の支配又は民主的手続を否定してはならない。
◇ 現行憲法(および自民党案)との比較
- 基本的人権の本質(第97条):
- 【自民党案】「第11条と内容が重複している」として、第97条を丸ごと削除している。
- 【私案】第97条を完全な形で維持する。これは単なる条文の重複ではなく、憲法が最高法規であることの「哲学的根拠」であるため。
- 憲法尊重擁護義務の対象者(第99条):
- 【自民党案】天皇や政治家、公務員に加えて、「国民」にも憲法を尊重する義務を新たに課している。
- 【私案】憲法を守る義務を負うのは「国家権力を行使する側(天皇、公務員、政治家)」のみであるという現行の構造を厳格に維持し、「国民」を義務の対象から完全に除外する。
◇ 視点と詳細解説(あえて改訂しないという強い意思)
本章の最大のポイントは、「憲法は権力者を縛るためのものであり、国民を縛るためのものではない」という立憲主義の大原則を死守した点にあります。
憲法は、主権者たる国民が「これ以上は踏み込んではならない」と国家権力に突きつけた命令書(社会契約)です。
命令を出した主人(国民)に対して、召使い(国家)の側が「お前もこの命令書を尊重する義務を負え」と要求することは、権力の主客転倒であり絶対に許されません。
だからこそ、第99条の義務の対象に「国民」を加えてはならないのです。
また、第97条の「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」という言葉は、私たちの持つ自由や権利が、国家からタダで与えられた恩恵ではなく、先人たちが血の滲むような闘い(過去幾多の試練)の末に国家権力から勝ち取ってきたものであることを示しています。
憲法が「最高法規」である理由は、単に法律体系のトップにあるからではなく、この「尊い人類の獲得物(人権)」を守る防波堤だからです。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】国家主義・道徳的観点から(第99条関連) 「国民が国の最高法規である憲法を尊重するのは当たり前のことだ。自民党案のように、国民の道徳心や愛国心を育むために『国民の憲法尊重義務』を明記しても何ら問題はないのではないか?」
- 【回答のロジック】 国民が自発的に社会のルールを重んじ、憲法を大切にすることは素晴らしい「徳(アレテー)」です。
しかし、それを「国家が憲法上の法的義務として国民に強制すること」は全く別の話です。
もし国民に憲法尊重義務を課せば、国家に反発するデモを行ったり、政府の政策を厳しく批判したりする市民に対し、時の権力が「お前は憲法を尊重していない非国民だ」とレッテルを貼り、弾圧する根拠(棍棒)を与えてしまいます。
国民を憲法保障の「最終主体」として位置づけ(第129条等)つつも、国家からの動員や思想強制は許さない。この「間合い」こそが、健全な自由民主主義の生命線なのです。
【反論2】法整備の効率化を求める立場から(第97条関連) 「第97条に書かれている『基本的人権は侵すことのできない永久の権利』という内容は、第三章の第11条に全く同じことが書かれている。法律のスマート化(無駄の削減)のためには、自民党案のように重複する第97条を削除するのが合理的ではないか?」
- 【回答のロジック】 第11条と第97条は、意味合いが全く異なります。
第11条は人権カタログ(第三章)の冒頭において「国民が人権を享有すること」を宣言した規定です。一方、第97条は最高法規(第十章)の冒頭において、「なぜこの憲法が国で一番強いルールなのか(=それは人類が勝ち取ってきた人権を守るためである)」という『国家の存在理由そのもの』を宣言した規定です。
ここを「重複だから」と削除することは、人権保障の歴史的重みを消し去り、憲法を単なる「無機質なルールの箇条書き」に貶める行為です。
いかに効率化が求められる時代であっても、国家の哲学の背骨まで削ぎ落としてはなりません。
第十一章 最高法規及び改正

第百三十七条 最高法規
この憲法は、日本国の最高法規である。
2 この憲法に反する法律、命令、規則、条例、処分、契約、行政行為その他一切の国家行為及び公的権限の行使は、その効力を有しない。
3 国及び地方公共団体は、この憲法に従い、国民の自由、尊厳及び権利を保障しなければならない。
第百三十八条 憲法尊重擁護義務
天皇又は摂政、国務大臣、国会議員、裁判官、公務員、国防軍の隊員その他公的権限を行使する者は、この憲法を尊重し、擁護する義務を負う。
2 前項の者は、国民の上に立つ者ではなく、国民の信託により公的権限を行使する者である。
3 国民は、この憲法により、国家権力を監視し、統制し、必要な是正を求める権利を有する。
第百三十九条 国際協調及び国際人権
日本国が締結した条約及び確立された国際法規は、誠実に遵守されなければならない。
2 国は、国際人権規約その他人間の尊厳、自由、平等及び平和に関する国際的基準を尊重し、この憲法の解釈及び運用に当たり、これらと調和するよう努めなければならない。
3 国際協調は、国民主権、基本的人権及びこの憲法の基本原則を損なうものであってはならない。
第百四十条 憲法改正の発議
この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成により、国会が発議する。
2 国会が憲法改正を発議するときは、改正案の内容、理由、影響、他の条項との関係及び国民生活への影響を、国民に分かる形で示さなければならない。
3 憲法改正案は、複数の内容を不当に一括して国民に判断させるものであってはならない。相互に独立した事項は、可能な限り個別に発議されなければならない。
第百四十一条 国民投票による承認
憲法改正は、国会の発議の後、国民投票において有効投票の過半数の承認を得なければならない。
2 国民投票においては、国民が自由で公正な判断を行えるよう、賛成及び反対の意見、改正の影響、争点、財源、制度上の変更点その他必要な情報が公平に提供されなければならない。
3 国、政党、政治団体、企業、宗教団体、労働団体、外国勢力その他の者は、虚偽情報、強制、買収、脅迫、不透明な資金又は不当な影響力により、国民投票の公正を害してはならない。
4 国民投票の手続、広告規制、資金規制、情報提供、投票環境及び濫用防止については、法律で定める。
第百四十二条 改正の限界
この憲法の改正は、国民主権、人間の尊厳、基本的人権の本質、権力分立、法の支配、民主的手続、司法審査及び平和主義の核心を失わせるものであってはならない。
2 憲法改正は、国家権力を国民の統制から解放し、又は国民を国家、団体、家族、企業、宗教その他のための手段として扱うものであってはならない。
3 憲法改正は、特定の政権、政党、指導者、団体、企業、宗教、外国勢力その他特定の勢力の権力維持又は利益のために行われてはならない。
第百四十三条 憲法改正後の検証
憲法改正が行われた場合、国会は、一定期間の経過後、改正の運用状況、国民の権利への影響、財政への影響、地方自治への影響及び将来世代への影響について検証しなければならない。
2 検証結果は、国民に分かる形で公開されなければならない。
3 国会は、検証結果に基づき、必要な制度改善、法律の整備又はさらなる憲法上の検討を行わなければならない。
第百四十四条 この憲法の目的
この憲法は、国家を国民の上に置くためのものではない。
2 この憲法は、国民一人ひとりが個人として尊重され、自由と尊厳をもって生き、互いに責任を負いながら共に社会を築くために、国家権力を定め、用い、かつ拘束するためのものである。
3 日本国民は、この憲法を通じて、過去から受け継いだ歴史、文化、自然及び共同体を未来へ手渡し、同時に、未来世代に対して自由、平和、法の支配及び人間の尊厳を引き継ぐ責任を負う。
◇ 現行憲法との比較
- 直接民主制の有無(第100条・101条):
- 【現行】国民が直接政治に参加できるのは、選挙、最高裁裁判官の国民審査、地方特別法の住民投票、そして「国会が発議した後の」憲法改正国民投票のみであり、極めて限定的。
- 【私案】スイスの制度をモデルとし、国民自らが憲法改正を提案する「イニシアチブ(国民発案)」と、議会が可決した法律を否決できる「レファレンダム(国民投票)」を導入し、主権者に事実上の拒否権を与えた。
- 国民の立ち位置と「動員の禁止」(第103条):
- 【自民党案など】国民に「憲法を尊重する義務」や「国防の責務」などを課し、国家が国民を統制・動員しやすい方向性が示されている。
- 【私案】国民を単なる憲法の「受益者」に留めず、憲法を動かす「最後の担い手(主体)」として位置づけた。同時に、国家がその責務を逆手にとって国民を動員したり、思想を強制したりすることを厳格に禁じた。
◇ 視点と詳細解説(改訂の意図)
本章は、日本人が本来持っている「踏み込みすぎを嫌う感覚」や「場を壊さず筋を通す感覚」といった『間合い』の感性を、立憲主義の作法として制度化したものです。
自由主義(権力の限界を定めること)と民主主義(みんなで決めること)は、互いに相手を暴走させないための緊張関係にあります。
選挙で選ばれた権力であっても、多数決を盾にして人間の尊厳を踏み越えることは許されません。
本章によって、国民は「お上任せの観客」であることをやめます。
普段は静かに見守りながらも決して見逃さず、権力が暴走した際には、第100条・101条の直接民主制という手段を用いて、相手を潰すためではなく「国家を正しい間合いに戻すため」に介入します。
主権者としての背筋は伸ばすが、国家に国民を鞭打たせることは絶対に許さない。
この絶妙なバランスこそが、新たな市民国家の完成形です。
◇ 予想される反論とその回答(思考の種)
【反論1】代議制民主主義との衝突を懸念する立場から
「国民投票で国会の決定を覆せるとなれば、国会議員の存在意義が失われ、ポピュリズム(大衆迎合)によって国政が混乱するのではないか?」
- 【回答のロジック】 直接民主制は代議制を破壊するものではなく、代議制の欠陥(選挙と選挙の間に民意が乖離する問題)を補完するものです。
スイスの例が示すように、国民投票という「拒否権」が控えていること自体が、政府や与党に対して「強行採決を避け、幅広い合意形成(熟議)に努めなければならない」という強烈なプレッシャーを与えます。
また、第102条によって情報空間の健全性を保つ義務を国家に課すことで、フェイクニュースによるポピュリズムの暴走を防ぎ、市民の「実践知」を育む土壌を保護しています。
【反論2】国家主義的な立場から
「国民に『監視の責務』を負わせるなら、同時に『国家を防衛する義務』や『国を愛する義務』も課すべきではないか?」
- 【回答のロジック】 私案第103条における「責務」は、国家のために尽くす義務ではなく、「国家権力が暴走しないよう、主権者として手綱を握り続ける責任」のことです。
国家が国民に愛国心や防衛を「義務」として強制した瞬間に、それは全体主義へと変貌します。
本私案は第103条2項において、国家による思想の強制や動員を明確に禁止しています。
真の愛国心や共助の精神は、自由で自立した市民の間から自発的に生まれる「徳」であり、憲法で強制するものではありません。
【包括的な所見】2026年最新改訂版 日本国憲法改正私案
この憲法改正私案は、単なる法的な条文の羅列ではなく、21世紀の日本社会がどのように生き延び、いかにして個人の尊厳を守り抜くかを示した「新たな社会契約」の壮大な青写真です。
- 「歴史的現実」と「普遍的価値」の完全な統合
男系男子という形骸化したイデオロギーや、側室制度を前提とした非人道的な制度的限界から皇室を解放し、自然な家族の形(絶対的長子相続制)へと原点回帰させました。
また、非現実的な建前を廃して「国防軍」を明記しつつも、前例のない強力な文民統制を敷きました。
これにより、日本の伝統と安全保障の現実を、基本的人権という普遍的価値の中に完全に統合させています。 - 「防御的民主主義」の極致
現代世界が直面する「選挙で選ばれた権力者による独裁化(民主主義の自壊)」というメガトレンドに対し、完璧な防波堤を築いています。
解散権の制限、不訴追特権の移行、司法人事への諮問委員会の導入、そして緊急事態における厳格な比例原則。
これらはすべて、国家権力を「本来の間合い」に留め置くための精緻なロック機構です。 - アリストテレス的「市民国家」の現代的具現化
国民を「庇護される弱い存在」として扱うのではなく、ウェルビーイングを追求し、直接民主制を通じて国家を統制する「自立した能動的な市民」として信頼し、その手に権力を委ねました。
情報自己決定権や環境権の新設は、巨大IT企業や気候変動といった新たな脅威から、この「市民のアゴラ(対話の広場)」を守り抜くためのものです。


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