アントルム・マートリス(母なる洞窟)(Antrum Matris)

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原義

アントルム・マートリス」は、イギリスのノース・ヨークシャー州ネーズバラ(Knaresborough)にあるマザー・シプトンの洞窟を指します。1630年から一般公開されている、イングランドで最も古い歴史を持つ観光名所のひとつです。

伝説の予言者「マザー・シプトン(本名:アースラ・ソンセイル)」が15世紀後半に生まれたとされる洞窟と、あらゆるものを石に変えてしまう神秘的な「石化の井戸(Petrifying Well)」があることで知られています。

  • マザー・シプトンの洞窟: 嵐の夜にこの洞窟で生まれたとされる彼女は、後に「イングランドのノストラダムス」とも呼ばれ、数々の予言を残しました。
  • 石化の井戸: 井戸から滴り落ちる水には豊富なミネラルが含まれており、テディベアや帽子、衣服などを吊るしておくと、数ヶ月から数年かけて石の層に覆われ、完全に石化していく不思議な泉です。

彼女に最大限の敬意を示し、アルマ・ケレスの山荘の名前に使わせていただいています。

『霧の森域』におけるアントルム・マートリス

霧の森域の自然保護区、そのさらに奥にあるアルマ・ケレスの山荘。
湖畔のマノワール・ド・ルミエール《光の館》から、未開発に近い山道を歩いた先にあり、一般の交通機関は乗り入れない。

傷ついた者だけでなく、普段は誰かを支えている者も、役割や評価から離れて静かに休むことのできる場所である。

光の館が傷ついた者を光のもとへ迎える場所ならば、アントルム・マートリスは、光さえ眩しい者を、森の胎内へ静かに匿う場所である。

元々は使われていなかった、ジン家の避暑の別荘を、アルマ・ケレスの移転に合わせ大幅に改装工事をしています。

アントルム・マートリスは、アルマ・ケレスの意向『自然と共にある』を十分に反映し、静謐が約束された空間となっています。
山荘は、診療所や学校のような場所ではありません。

訪れた者を診断したり、採点したり、矯正したりしない。
グランマは話すことを強要せず、黙っている者にも茶を注ぐ。

アントルム・マートリスは、人を変える場所というより、変わることを要求されずにいられる場所です。

物語中では、傷ついた魂が外部からの干渉を離れ、自らの回復力を取り戻すための「受容のコントロールプレーン」とも表現されます。

“ザ・ガレージ”の存在

山荘の半地下には、アルマの孫レオ・ケレスが古い車庫を改造した創造工房《ザ・ガレージ》がある。

静かな受容を象徴する地上部と、バグや遊びから新しいものを生み出す半地下が、同じ建物の中に共存している。
その光景を、祖母アルマは微笑ましく見守っている。

クララ・ハルモニアとの関係

クララ・ハルモニアにとって、アルマは恩師であり、育ての母でもあります。

クララは休日になると山荘を訪れ、アルマと紫煙と杯を交わしながら静かな時間を過ごします。
科学と現代臨床を背負うクララが、古典的な魂の知恵を持つアルマのもとへ戻り、自分自身もまた休むのです。

普段は他者を支えるクララが、ここでは「支える側」であり続けなくてもよい。

この意味でアントルム・マートリスは、患者や傷ついた者だけでなく、治療者や支援者が鎧を脱ぐための避難所でもあります。

山荘の内部

アントルム・マートリスは、山の斜面へ寄り添うように建てられた、石造りと木造を組み合わせた古い山荘である。

長い年月の間に修繕と増築を重ねてきたため、建物には異なる時代の意匠が混在している。

床や廊下にはわずかな段差があり、柱や扉には、ここを訪れた人々が過ごしてきた時間の痕跡が残されている。

正面玄関を入ると、小さな土間とクロークがある。
来訪者は濡れた外套や荷物とともに、外の世界で背負ってきた肩書や役割を、いったんここへ下ろす。

山荘の中心には、大きな暖炉を備えた広間がある。

暖炉の周囲には、形も年代も異なる椅子が並べられている。

ここでは、話すことも沈黙することも、等しく認められる。
訪れた者が言葉を見つけられないとき、アルマ・ケレスは答えを急がせず、まず茶を注ぎ、火のそばへ椅子を勧める。

広間には、素朴な食堂と台所が隣接している。

食品庫には保存食や乾燥させた薬草が収められ、森に面した小さなサンルームでは、雨音や鳥の声を聞きながら静かに過ごすことができる。

一階の奥には、アルマの書斎がある。

古典心理学、精神医学、哲学、東洋思想、民間伝承、植物学などの書物が壁を埋めているが、ここは学説を講義するための研究室ではない。

部屋の中央には小さな丸テーブルと二脚の椅子があり、訪れた者とアルマが、答えの出ない問いを共に囲むために使われる。

二階には、来訪者が休息するための小さな客室が数部屋ある。

森を望む部屋、沢の音が聞こえる部屋、昼でも薄暗い部屋、夜空を見上げる天窓のある部屋。それぞれの部屋には必要最小限の家具だけが置かれ、誰にも説明を求められずに眠ることができる。

廊下の突き当たりには、窓と一脚の椅子だけを備えた「沈黙室」がある。

祈るための場所と定められているわけではない。
考えても、泣いても、何もせずにいてもよい。

ただ一人であることを、誰にも妨げられないための部屋である。

山側へ埋め込まれた半地下には、古い貯蔵庫、薪置き場、機械室、そして車庫がある。

その車庫をアルマの孫、レオ・ケレスが半ば勝手に改造したものが、創造工房《ザ・ガレージ》である。

地上部が沈黙と受容の場所であるのに対し、半地下には、古い機械、コンピューター、配線、試作品、電子音、そしてレオの思いつきが積み重なっている。

アントルム・マートリスは、傷ついた者がただ眠るためだけの場所ではない。

地上では、魂が外の世界から守られ、静かに休息する。
その半地下では、制約や失敗やバグから、まだ名前のない何かが生まれようとしている。

休息と創発。

過去を抱く場所と、未来を作る場所。

その二つが、同じ山荘の中で静かにつながっている。

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