霧の森域《シルヴァ・ネブラエ》に広がる自然公園、その中心にある湖のほとりに佇む、質素だが風格ある白亜の洋館。
この自然公園は、代々ジン家が管理してきた広大な保護区であり、小動物や野鳥、傷ついた森の生きものたちが静かに暮らす場所でもある。
現当主エレノア・ジンは、「自然と共にある」という自らの信条を反映し、湖畔にこの館を建立した。
館の内部
館内も、外観と同じく華美ではない。
玄関ホールには湖と森から持ち込まれた自然光が入り、白い壁と淡い木材の床を静かに照らしている。
家具の多くは長く使われてきたもので、細かな傷や補修の跡が残る。けれど、それらは古びているというより、ここで暮らしてきた時間を物語っている。
一階には応接室、食堂、書斎、小さな診療室が置かれている。
診療室は、人間のためだけのものではない。森で傷ついた小動物や野鳥が運び込まれ、一時的な治療や保護を受けることもある。
大きな窓のある食堂では、来客、保護区の管理人、研究者、森の世話をする者たちが、身分にかかわらず同じ卓を囲む。
館の北側には温室があり、薬草、香草、季節の花々が育てられている。
二階には居室と客室があるが、その多くは豪華な客人を迎えるためではなく、森の調査に訪れた者や、静養を必要とする者が一時的に身を寄せるための部屋として使われている。
エレノア・ジンと光の館
エレノア・ジンは、この館を自らの権威を示すための城とは考えていない。
彼女にとって館は、森を支配するための場所ではなく、森と人との間を取り持つための場所である。
自然保護区の管理。
傷ついた生きものの保護。
訪れる者との対話。
森に関する古い記録の保存。
そして、ときに心身を疲弊させた者へ、何も急がなくてよい時間を与えること。
それらが、この館の役割となっている。
エレノア自身も、晴れた日の午後には庭園や湖畔を歩き、管理人や庭師、近隣の住民たちと言葉を交わしている。
彼女は館の主人ではあるが、森の所有者を名乗ることを好まない。
「この土地を所有しているのではありません。
私たちの方が、しばらく預からせてもらっているのです」
とは、彼女がしばしば口にする言葉である。
「光の館」という名
「ルミエール」は、光を意味する。
しかし、この館の名が示す光は、闇を力ずくで追い払う強烈な光ではない。
湖面に反射する朝の光。
木々の間から差し込む光。
窓辺で本を読むための光。
長い道を歩いてきた者が、ようやく見つける灯火。
マノワール・ド・ルミエールとは、誰かを照らし出して裁くための館ではない。
迷った者が自分の足元を確かめ、再び歩き始めるための、小さく静かな光を守る館である。節ごとに変わる花の香りと水鳥の声が、訪れる者の足取りを自然と緩める。
敷地の一部は普段、地元の人々へ無料開放されており、散策路、花園、小さな読書用の東屋、動物保護区へ続く木道が整えられている。


