黒、タン、古茶の艶やかな体毛が印象的なヘレニック・ハウンド。
グランマ(アルマ・ケレス)に仕える猟犬。
周囲からは、その落ち着いた物腰と古参としての威厳に敬意を込めて「ライラプス夫人」と呼ばれる。ただし、彼女自身が伴侶を得たことはない。
礼儀正しく、物腰は穏やか。
しかし、好奇心が刺激されると目の色が変わる。
ミス・ライラプスは、知識を愛している。
ただし、それは静かに本を読む愛ではない。
彼女にとって知識とは、匂いを残す獲物である。
足跡があり、隠れ場所があり、逃げ道があり、そして必ず追い詰める瞬間がある。
普段は落ち着いているが、未知の手がかりを見つけると、耳がわずかに動く。
そのときの彼女を止めるには、グランマの一言か、レオの本気の制止が必要になる。
ただし、獰猛ではない。
彼女は獲物を壊したいのではなく、正体を知りたいのである。
そんな彼女を人は『未知を狩る、周到なる猟犬』の異名で呼ぶのである。
レオ・ケレスの幼少期から共に育ち、レオからは親しみを込めて「ライラプス姉ちゃん」と呼ばれる。
ミス・ライラプスとミスター・ワトスンは、互いに力量を認めながらも、少し苦手とし合っている。
ライラプスは、沈黙して結論の近くに座るワトスンをやりにくい相手だと感じている。
彼は追跡される前に、すでに答えの近くへ辿り着いているからだ。
なぜ追わないのか理解しづらい。
しかし、彼が座った場所には意味がある。
一方のワトスンも、ライラプスの熱量を少し苦手としている。
彼女は眠っている問いまで嗅ぎ起こそうとする。
なぜ眠っている問いまで起こすのか理解しづらい。
しかし、彼女が嗅ぎつけた匂いは無視できない。
それでも二人は、互いを軽んじてはいない。
ライラプスは、ワトスンが座った場所には必ず意味があると知っている。
ワトスンは、ライラプスが追い続ける匂いの先に、本当の入口があると知っている。
だから彼らは、必要なときだけ協力する。
そして協力したあとは、たいてい別々の方向を向いて毛づくろいをする。


